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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
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ゲイカクテル 第2章 ~ SILVER BLUE ~

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 ビアンカはそう言うとドンペリ・ピンクを一気に吞み干した。ビリーが空いたグラスにドンペリ・ピンクを注ぐ。ビアンカが礼を言うと、今度はビリーがジンジャーエールを飲み干した。ビアンカは冷蔵庫から新しいジンジャーエールの瓶を取り出し、栓を抜いて注いだ。ビアンカはビリーと朝まで吞むつもりでいた。ビリーは帰れないなと思ったので、ビアンカに一言断って席を外し、店の電話を借りてアレックスに連絡を入れた。店の閉店が朝七時なので、朝食を作っておいて欲しいと頼んだ。バイオロイドなので睡眠モードに切り替えなければいつまでも起きていられる。アレックスは了承し、電話を切った。ビリーはVIPルームに戻り、ビアンカの横に座った。
「そうだ。これ、一個お試しであげるよ」
 ビアンカは鞄からゲイカクテル一回分を取り出し、ビリーに手渡した。ヨハンの言う通り、シルバー二錠、ブルー一錠にドラゴンの刻印が彫ってあった。これは収穫だ。トーマスからもリチャードからもゲイカクテルは出ていない。ビリーは礼を言って、スーツの内ポケットにしまった。ビアンカは廊下で待たせていたホストを呼び戻した。そして朝七時までみんなでおしゃべりをして吞み明かした。

 朝、ビリーが家に帰ると、アレックスが朝食を作って先に摂っていた。ビリーも席に着き、朝食を摂り始めた。そして昨晩の成果を報告すると、アレックスはロゴスに電話をした。
「もしもし。オール・トレード商会のアレックスですが、ロゴスをお願いします」
 しばし間があってロゴスが出た。
「おう、どうした」
「共和国産のヤクのコトだ。通称ゲイカクテルって言って、ゲイストリートで流行ってるらしい」
「そうか。弱ったな。ゲイストリートはオレの管轄外だ」
「だよな。どうする?」
「仕方がない。そっちと警察に任せるしかない」
「分かった。こちらでなんとかする」
「頼む。あぁ、それと昼にガイをそっちによこす。仕事を一つ任せたい」
「分かった。待ってるよ」
「じゃあ、よろしく頼む」
 電話は切れた。アレックスは困った。ガイが来るというコトは、ムニョスに会いに行けというコトだ。恐らくムニョスも仕事を依頼してくるに違いない。厄介なコトでなければいいのだが、そうもいかないだろう。アレックスはため息をついた。ビリーが朝食の後片付けをしながら声を掛けてきた。
「どうしたんですか、親分」
「どうもこうも、ガイが昼に来るらしい」
「ムニョスの所ですか」
「たぶんな。やれやれだ」
「話は変わりますが、この情報、ロンの耳に入れた方がいいですか」
「そうだな。そうしてくれないか。あいつ、昼頃に決まって帰ってくるから」
「分かりました。そうします」
 手を拭きながらビリーは答えた。アレックスはため息をつきながらも筋トレを始めた。ビリーは花瓶の水替えと掃除、洗濯物をした。
 昼になり、ビリーは昼食を作り、二人で食べた。その後ビリーは三〇五号室に向かい、アレックスはガイを待つコトにした。蛇腹格子のエレベーターに乗り、三階で降りるとビリーは突き当たりの三〇五号室の呼び鈴を押した。
「どちら様?」
「ビリーです」
 鍵を開け、チェーンを外す音が聞こえてドアが開いた。ビリーがリビングに行くと先客がいた。
「ごめんなさい。お客様がいらっしゃったんですか」
「あぁ、大丈夫。彼女は麻薬課の刑事のシャズ・ゴードン」
「そうですか。お邪魔します。えぇと、初めまして、ゴードンさん。ビリー・トマス・シュナイダーです」
「シャズで結構よ」
「はい。私はビリーでお願いします」
「まぁ、席に着け、ビリー」
「はい。失礼します」
 言われるがままにソファに腰を掛けた。
「ビリーはオール・トレード商会の情報担当なんだ」
「あのオール・トレード商会? やり手の?」
「ありがとうございます」
「いい噂でよかったな」
「はい」
「今日はどうした」
「お二人共トーマスとリチャードの事件を担当されてるんですか?」
「あぁ、そうだよ」
「ちょうどよかったです。ちょっと見て欲しい物があるんです。これなんですが」
 ビリーは内ポケットからゲイカクテルを取り出して、テーブルの上に置いた。ロンとシャズはまじまじと見つめた。
「これ、なぁに」
「シルバーブルーです。またの名をブルードラゴン。通称ゲイカクテル」
「つまりなんだよ」
「共和国産のヤクです。トーマスが売っていた物です」
「なんだって!? どこで手に入れた」
「ゲイストリートです。それ以上は言えません」
「連中、口堅いからなぁ。なかなか吐かんだろうな」
「元々秘密主義ですからね」
 二人は唸った。ゲイストリートは加減が難しい。上手くやらないと協力してくれない。客は当然のコト、店側もそうだ。オーナーが協力してくれない。厄介の場所で流行っているものだと二人は思った。
「ボスは分かっているの?」
「ホランド郡のボスは分かっています」
「誰なの」
「今は言えません。大ボスを叩かないと意味ないですから」
「そうね。言えるようになったら教えてちょうだい」
「分かりました。そのボスの話によると、六日後にヤクの取引があるそうです」
「どこか分かる?」
「そこまではちょっと……」
「オレ達の腕の見せ所だな」
「オーランド郡が怪しいと思うんです」
「国境接してるからか?」
「それもあるんですが、親分がどうもオーランド郡に行くらしいんです。ロゴスの仕事で」
「そっかぁ。アレックスが呼ばれるってコトは余程のコトだな。ムニョス・ロザリオの所だな、たぶん」
「でしょうね」
「ムニョス・ロザリオって?」
「ロゴスの大親分。オーランド郡を牛耳ってる」
「そうなの。知らなかったわ」
 三人は黙りこくった。これはオーランド郡の協力も得なければならないかもしれない。それどころか、もっと広範囲に広まっていたらどうしよう。ルートも大ボスも分からない。まずはアレックス次第だ。オーランド郡で何かやらかしそうな気配がプンプンする。とりあえずシルバーブルーは手に入ったので、後はアレックスが何をしでかすかだ。いい方に転ぶか悪い方に転ぶか、一種の賭けだ。六日後、どう摘発するかを考えなければならない。それも必要だ。まずは情報収集だ。そこはビリーも手伝う。三人共思案顔だった。