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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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アルフ・ライラ・ワ・ライラ9

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それでも、赤い目をして微笑む、頑固な主人にジャハールはため息をつく。
「それにね、アーレフ老師が言ってた。『魔法は授かり物』なんだって。必ず意味があるんだって。その意味に、本当の魔法の力に気づきなさいって」
ジャハールに話していくうちに、イオは確信に近づいていく。
なぜ自分は混乱しているのか。
なぜ、ここを去りがたく思っているのか。
―――――そう、そうだ。
「だからわたしも、ここで、わたしの魔法の意味に、本当の力を見つけたい」
きっぱりと言い切る娘。その瞳には今までの陰りも、迷いもない。
「お前・・・」
やれやれと肩をすくめる魔神に、今度こそイオは微笑む。
「ジャハールも一緒に手伝ってくれたらいいのに」
イオの言葉に、ジャハールはガシガシと頭をかいて。
「・・・あのじいさん、苦手だ」
しぶしぶ吐き出された言葉にイオは目を見開き、そして・・・
「ぷっ、あははは。ジャハールでも苦手なものあったんだね」
「うるせえ、笑うな」
声を上げて笑うイオの頭を、ジャハールは力任せにグリグリとかき回すが。その様子すら威勢を張っているみたいで、ますますおかしくなってきた。
なんだか、さっきまでの重い気分が吹き飛んだみたいだ。
――――なんでだろう、ジャハールのこと、前ほど怖くない。それよりも。わたし、ジャハールにずっと会いたかった気がする。
そんなイオの変化に気づく様子もなく、ジャハールは辺りをふよふよと漂っている『灯り』の一つに手をのばす。そして、彼にしては珍しく、そっと手にとると、ボソリと呟いた。
「嫌いじゃない」
「え?」
「オレは、お前の魔法、嫌いじゃない。お前の灯りはあたたかい」
―――――その瞬間、やさしい声がよみがえる。

『わたしは、イオの魔法が好きよ。あなたの魔法はあたたかい、やさしい魔法ね』

「!」
胸を貫く痛みは、雷にうたれたよう。
苦しくて、切なくて、でも、甘くうれしくて、どうしようもなく泣きたくなった。
「ジャハール・・・ありがと」
「もう寝ろ、オレは行く」
「うん。おやすみ、ジャハール」