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東奔西走メッセンジャーズ 第一話

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 この街は不思議と俺が今まで置いて来た物を返してくれる……いや、再度俺に問いかけてくるような気がする。
 それを捨ててしまって良かったのか、今から取り返す心算があるのか。
 その答えを、俺は一年で見つける事が出来るんだろうか。
 そんな事を思いながら、夢中で星を追っていた俺の肩に、ふわっと良い匂いと共に、ダウンジャケットが掛けられた。
「先輩?」
「ゆっくり見てると良いわ、ただし風邪は引かないように」
 じゃ、お寝み〜と言いながら、先輩は踝を返して、お供のメタボ猫と共に野良屋の中に消えて行った。
 俺が、邪魔されたくないって思ったのを判ってくれたんだろうか。
 それとも、単に星空に興味が無かったのか……先輩の態度はどちらとも取れるものだったし、俺にはまだ、どっちだったのか判断できるほどの人生経験も、彼女との付き合いの深さも無かった。
 ただ、今は彼女が言ってくれたように、しばしのんびりと星を追うことにしよう。 
 俺が住人になった事を、この江都も祝ってくれているような……そんな錯覚さえ覚えるような星空なんだし。



                  東奔西走メッセンジャー 第一章 「江都」了