紺青の縁 (こんじょうのえにし)
二十年前の初秋、宙蔵の四十九日が終わった頃、霧沢は桜子を訪ねた。その時、その絵を形見分けとして桜子より譲り受けた。
それを一旦洋子に返却したが、洋子の自殺以降引き上げ、その後ずっと手元に置き、今まで保管してきたのだ。
「これは、洋子さんが大事に飾っていた宙蔵さんの絵だよ。愛莉見てごらん、ヨットに三人乗っているだろ、その真ん中にいる小さな子が愛莉だよ」
霧沢はそう話しながら、その絵を愛莉に手渡した。愛莉はしばらく何も言葉を発せず、それに見入っている。そしてその後、そのキャンバスの裏側に書かれてある〔青い月夜のファミリー〕の文字を読み、涙ぐむ。
「お父さん、ありがとう、これ大事にするわ」
「そうしなさい」
霧沢はそう軽く答えてはみたものの、もう後は言葉にならない。万感の思いで胸が締め付けられてくるのだった。
作品名:紺青の縁 (こんじょうのえにし) 作家名:鮎風 遊