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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 その当時へと回顧すれば、霧沢は十八歳の時に地方から出て来て、京都で学生時代を過ごしていた。そして、その頃のキャンパスは学生運動で大きく揺れていた。
 一九六九年一月十八日と十九日、七十八時間の攻防の末、全共闘が封鎖する東大安田講堂が陥落した。また京都では、それに反発するかのように学生運動はさらに激しさを増し、百万遍(ひゃくまんべん)の交差点が解放区になったりもした。

 そんなラディカルな闘争が続いてはいたが、霧沢は学生運動には興味がなく、いわゆるノンポリの部類だった。その証拠と言えるのかも知れないが、なぜか美術サークルに所属していたのだ。そしてその同類のメンバーに、花木宙三、滝川光樹、桜子、ルリの四人がいた。

 確かに、霧沢は幼い頃から絵を描くことが好きだった。だがノンポリ中のノンポリだったためか、美術サークルだと言っても活動にそれほど熱を上げていたわけではなかった。美術室が使える日を狙って、たまにブルータスの石膏像のデッサンをする程度のものだった。

 しかし要領だけは良かったのだろう、留年することもなく二十二歳で卒業した。そして霧沢はその機に心機一転、秘めた夢を追って、海外へと一人羽ばたいて行ったのだ。 

 それからというものは、美術サークルのメンバーたちへ連絡を取ることもなくなり、音信不通の状態となった。
 こうして友人たちとの縁も自然消滅していってしまったのだった。