紺青の縁 (こんじょうのえにし)
カーテンの隙間から差し込んでくる朝の日射しが目映い。霧沢は目を覚ました。
「あれっ?」
あんなにも激しく、鬼気迫るほど燃えたルリが……。
このベッドの中で、一緒に眠っているはずのルリがいない。
霧沢はベッドから下り、バスルームの方を覗いてみた。
ルリがこともあろうか部屋から消えてしまっているのだ。そして、霧沢はテーブルの上に置かれた一通の手紙を見付ける。
それを手にして、まだ眠気のある目をこすりながら読んでみる。
アクちゃんへ
二人だけの夢の世界へ連れて行ってくれて、ありがとう。
アクちゃんのいなかったこの八年間。
いろんなことがあって……。
そして、今も続いているわ。
たとえば、ジャズ喫茶店に飾っていた花木宙蔵の〔青い月夜の二人〕の絵。
桜子が高く買い取ってくれたわ。
多分、なにかの口止めなんでしょうね。
だけど、夕べアクちゃんに抱かれて、
たとえ一時でもそんなことを忘れることができたわ。
その上に、「アクちゃんの宿命と私の宿命は、もう一緒になったのね」と厚かましいことを囁いてしまった。
アクちゃんが思っている通りよ。
私は、やっぱり汚(けが)れてしまっているの。
それに、これ以上アクちゃんに、迷惑を掛けられない。
だから、もういいのよ。
元の霧沢君に戻って。
私たちの縁は、決して結ばれないものだったのかも知れないね。
けれど……
もし霧沢君にもっと強い気持ちがあって、
いつかまた逢うことがあるのなら
その時までに、私
もう少し身も心も綺麗にしておかないとね。
ルリより
作品名:紺青の縁 (こんじょうのえにし) 作家名:鮎風 遊