紺青の縁 (こんじょうのえにし)
霧沢はまず部屋の前で手を合わせ、宙蔵の冥福を祈り、それから室内へと進み入った。そこはさすが事故死の現場だった。ベッドに焦げた跡があり、実に生々しい。
しかし事故の後、きっと桜子が片付けたのだろう、その部屋だけは整理整頓されている。
霧沢にとっての〈花木宙蔵の密室・消化器二酸化炭素・中毒死〉、本当に宙蔵は事故で亡くなったのだろうか?
これがもし密室殺人事件なら、どういう手立てで?
霧沢はここへ来るまでに推理を一応してみたが、答はそう簡単に見付かるものではなかった。
この際だから、誰かに謎解きをしてもらいたいものだと思ったりもしたが、すでに捜査当局はこの出来事を密室内で宙蔵自身が引き起こした事故死と断定してしまっている。たとえ宙蔵が霧沢の友人であったとしても、もうこれ以上の仔細な追求をしていくには無理があると改めて思った。
その結果、霧沢にとってすっきりしないところを残したままではあったが、花木宙蔵のアトリエ・マンションを後にするのだった。
作品名:紺青の縁 (こんじょうのえにし) 作家名:鮎風 遊