紺青の縁 (こんじょうのえにし)
三十年前に、ママ洋子からチーママとして紹介されたマミ。マミは新人女優のように花があったことを霧沢は今も憶えている。
それから長い歳月の旅路の果てに、マミに、いや女将の真由美に霧沢は再会した。そして真由美は、あれから今日までのすべての出来事を語り尽くしてくれた。
霧沢はそれにこの世の切な過ぎる運命を思い、そして摩訶不思議な縁を実感しながら聞いていた。
学生時代にルリに出逢った。それから四つの出来事が起こり、しかし多忙でそれらについて深く考えることはなかった。
だが真由美の口から明かされた物語、「うーん、そういうことだったのか」と霧沢は心の奥底から唸らざるを得なかったのだ。
真由美はきっと霧沢に真実を伝えておきたかったのだろう。そして話し終えて、明日警察に出頭することの覚悟が決まったようだ。落ち着きを取り戻した。
「息子の遼太には、優菜さんへの愛を一途に貫け、それが男の責任だと言い聞かせておくから。もう若い二人のことは心配しないで」
霧沢は真由美にそう暇の言葉を告げた。
また娘の優菜には「きっとびっくりするような良いこと、そうだなあ、お姉さんが突然現れ出てくるようなことがあるかも知れないから、その内にまたお会いましょう」と再会の約束の言葉を掛けた。
そして、四つの出来事の真実を知った時に、何かに出逢えると以前から予感していたが、それは愛莉の妹、優菜のことだったとわかり、今霧沢の胸は高鳴っている。
そんないろいろな思いが交錯する中、ほろ酔いながらも小料理店・鴨川青龍を後にした。
そして、それから一週間後のことだった。老舗料亭の女将・花木桜子の殺害事件の容疑者として、花木龍二が逮捕された。その報道された内容とは次のようなものになっていた。
作品名:紺青の縁 (こんじょうのえにし) 作家名:鮎風 遊