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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 霧沢が辿り着いた推理は、次のようなものだった。

〈花木宙蔵の密室・消化器二酸化炭素・中毒死〉と〈洋子のクラブ内首吊り自殺〉。
 それらは殺人事件であり、その犯人は桜子。
 そして、それを手助けしたのは滝川光樹。

 また、二十八年が経過して起こった事件。それは桜子の〈老舗料亭・女将・新幹線こだま内塩化カリウム注射殺人事件〉。
 滝川沙那は遼太が書いたミステリー小説からヒントを得て、下りのこだまから桜子が乗る上りのこだまに乗り移り、桜子を殺害した。

 最後に、光樹と沙那の〈画廊経営夫妻の周山街道・自動車落下事故〉。
 沙那の夫の光樹が関わってきた過ち、それらに対しての沙那自らへの罰。そして子供たちの未来のために、不幸な過去のすべての消去。そのためにまず怨恨で桜子をこだま内で殺害し、そして続けて、光樹が運転する自動車で事故を装い、谷底へと自分たち自身も共に消滅させてしまった。

 不完全ながらも、霧沢の推理は大筋でこのようなものだった。
 しかし、最近のことだった。沙那が語ったことを、ルリが話してくれた。
 それは、沙那の夫、光樹と桜子は不倫関係ではなかった。借金を抱えていて、桜子の悪事の隠れ蓑にされてきただけ。そのために、光樹は宙蔵や洋子の死に直接的には関与していない。
 だが桜子に利用されてきたのは事実、その罪を償うために、息子の嫁となる愛莉に幸せを作ってやりたい。沙那がこう語り、さらに「私にはやっぱり人を殺めることはできなかったわ」と打ち明けられたと、ルリは話していた。

 もし沙那のこれらの言葉が真実であるならば、霧沢が今まで積み上げてきた桜子と光樹が共犯で首謀者という推理は成り立たなくなってくる。
 そう言えば、確かに解けない謎があった。それは〈洋子のクラブ内首吊り自殺〉。
 もし桜子がその犯行に及んだとすると、名神高速道路の名古屋を過ぎた岐阜県の養老サービスエリアに立ち寄ったというアリバイを崩さなければならない。
 だが未だ看破できていない。それはある意味では、これらの事件は複雑で、もうこれ以上のは謎解きは不可能だ。だから、今となってしまった以上、もう過去の出来事は忘れてしまって、第二の人生へと早く歩み始めた方が良いのではと思いたくもなってくる。