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紺青の縁 (こんじょうのえにし)

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 しかし、三十年前にルリと再会してから、その後共に生きてきた歳月の中で起こった四つ出来事。
 それらは〈花木宙蔵の密室・消化器二酸化炭素・中毒死〉から始まり、〈洋子のクラブ内首吊り自殺〉へと続いた。
 そして二十八年の月日が流れ、〈桜子の新幹線こだま内塩化カリウム注射殺人事件〉が起こり、最後に〈光樹と沙那の周山街道・自動車落下事故〉で終わった。

 定年退職後、霧沢が一人で推理してきたストーリー、それは不完全ながらも、中(あた)らずと雖(いえど)も遠からずのような気がしてくる。
 しかし、さらに求めたい真実は、光樹と沙那の周山街道・自動車落下事故で、今まで間接的だったにしろ絡んでいた光樹は亡くなり、すべて雲散霧消(うんさんむしよう)してしまった。
 霧沢はこんなことを感じながら思い出す。それは、定年退職後すぐに賀茂大橋の上でルリが囁いた言葉を。「知り過ぎない方が良いこともあるのよ」と。

 確かにその通りなのかも知れない。霧沢はもうこの辺りで深く考えることは止め、過去を忘れてしまおうか、そして絵でも描こうかと、ルリとの夫婦の会話を通して思った。
 しかし、霧沢にとって、事はそう簡単なことではなかったのだ。