娘へ～今、旅立ちゆく貴方へ～
今、私はあなたにかけるべき言葉が何も見つからない
打ちひしがれているあなたを見ている私の心もまた泣いている
しかし、これだけは今、伝えておきたい
人生は一度の失敗で終わるような呆気ないものではない
長い冬の次に温かな春がめぐりくるように
苦しみの後にはまた歓びもある
大切なのは諦めないことだ
諦めてしまえば そこでおしまいになる
あなたが絶望しないで また立ち上がって歩き続ければ
あなたの前には再び限りなく道は続いてゆくのだから
辛く厳しい冬に耐え抜いた花は
凜として美しく しなやかな強さを持っている
それは苦しみを乗り越えたからこそ より輝いて花ひらき
丈夫で長く咲き誇れるのだ
あなたは知っているだろうか
つまずきを知っている人の方が知らない人よりもはるかに強いことを
今のあなたはあまりにも若すぎて
迷いと落胆のただ中にいるから
私の言うこともなかなか届かないだろう
けれど 母の言葉の意味をやがて
歳を経た時 きっとあなたも知るようになる
長い人生の中で躓きや失敗を経験しない人は一人もいない
誰もが大なり小なり 挫折を経験して人生を生きていくのだ
平坦な道を歩き続ける人よりは
険しい山を乗り越えた人の方が何倍も強く豊かになれることを
やがて あなたも知るときが来る
本当に大切なのは、失敗から何かを学んで 立ち上がり次に繋げていくことなのだ
娘よ
今日いう日を泣くだけ泣いたら
明日からはまた立ち上がって欲しい
十五年という短い歳月はまだ諦めるには早すぎる
あなたの何倍かを生きてきた母は
数え切れないほどの挫折を味わった
時には心が折れそうなことも何度もあった
それでも懲りずに逞しくここまで歩いてきたことをこころから良かったと思っている
何も他人に誇れるようなもの持たないが
諦めずに歩き続けてきたということだけは唯一の取り柄だと思っている
これからあなたが進む道にも
きっと良き出逢いがあり 素晴らしい想い出となる未来が待っていることだろう
人生はたった一度きりだ
その自分の一度だけの人生は
誰が代わりに生きるわけでもなく
他ならない貴女自身が生きなければならない
ずっと先になって つまらない後悔をしないように
あなたなりの一度きりの人生を生命を輝かせながら生きていって欲しい
母は願っている
Ｙｏｕｔｈ ｎｅｖｅｒ ｉｎ ｄｉｓｐａｉｒ
【若者はけして絶望しない】
私が遙か昔 中学生であった頃 英語のリダ―で学んだアンネ・フランクの言葉
ユダヤ人だというだけの理由でナチスに迫害され
辛い収容所の生活を送り十代の若さで亡くなった少女
その日記に遺された言葉だ
今日という日の終わりに 私の大好きな言葉をあなたに贈ろう
作品名：娘へ～今、旅立ちゆく貴方へ～ 作家名：東 めぐみ