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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 3 蒼雷

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三人娘と侯爵閣下



 マタイサの戦いにおいて、一人で、しかも一撃でデミヒューマンをほぼ全滅させるという大殊勲を上げたオリガの地位は、あれよあれよという間に押し上げられ、街に帰って3日後には現在ジゼルの下にいる二人の千人長と大差ない待遇になっていた。
 普通であれば喜ぶ待遇ではあるが、もともとが平民の出で、庶民感覚を持っているオリガは、破格の待遇に逆に胃が痛い思いをして過ごしていた。
 今日も場違い感漂う会議の場を、体調不良を理由に抜け出したオリガは城の中庭につながる出入口の石段に腰を下ろして、庭の景色を見るともなしにぼんやりと眺めながらため息をついていた。
「物騒なあだ名がついたせいで、最近ますます男性との出会いも減ってる気がするし・・・。」
 蒼い大きな盾と揃いの蒼い鎧を身に着け、大きな炸裂音をさせながら敵集団を切り裂いていくオリガについた二つ名は蒼雷。
 同行していた騎士達はもちろん。彼らから、その凄まじい破壊力、活躍を伝聞で聞いた他の騎士たちはますますもってオリガに近づかなくなってしまった。いや、近づいてくることは来るのだが、それは彼らが意中の女性に対してしているような優しげな態度のものではなく、戦友に対しての遠慮のないそれだった。
「・・・私の・・・婚期が・・・。」
「今期?予算の話?」
 頭を抱えて唸り声を上げるオリガの横に座って、ジゼルが首をかしげた。
「ジ、ジゼル様。」
「体調不良なんて言って会議をサボった割には、元気そうね。」
「は・・・その・・・。」
「そんなに畏まらなくてもいいわよ。で、どうしたの。真面目なあなたが会議をサボるなんて。」
「いえ・・・その。」
「何か待遇に不満があった?それとも誰かにいじめられたとか?うちの二人はそんなことないだろうから・・・もしかしてリシエールのお歴々?だったらちゃんと抗議するけど。」
「いえ。そういうことではないです。むしろ、リシエール騎士団には誘われることもあったりしますし・・・。」
「それはそれで聞き捨てならないわね。まあ、それはそれとして、じゃあ一体どうしたの?愚痴でもなんでもちゃんと話してみなさいな。あたしはあなたの上司なんだから。」
「はい・・・実は・・・」
 オリガが事情を話し終わると、ジゼルは「ふむ」と短く言った後で考え込んだ。
「なるほどねえ・・・まあ、私達もいい歳だし、そろそろ相手が欲しいっていうのはわからなくもないのだけど。」
「ですよね・・・。」
 そう言ってからオリガは、なぜジゼルにこんな話をしてしまったのかと後悔した。
「ん?どうしたのオリガ。」
「い・・・いえ。何でもないです。今の話も聞かなかったことにしていただけると・・・。」
「あ。もしかしてグレンの事気にしてるの?」
「・・・。」
 オリガは答えなかったが、その気まずそうな沈黙が何よりも流暢にオリガの気持ちを語っていた。
 そんなオリガを見てジゼルは苦笑いを浮かべた。
「グレンの事は忘れたわけじゃないけど、先のことを考えないといけないとは思ってるのよ。ただ、どうしたって、グレンと比較したりすることがあるだろうから、それなりに器の大きな人じゃないと、お付き合いも結婚も難しいとは思うけどね。」
「ジゼル様・・・。」
「グレンが死んでからみんな気を使ってこういう話をあたしにしなくなっちゃったから、オリガから話を振ってくれて少し嬉しかったんだけど、オリガにも、もうこういう話して貰えないのかしら。相手が居ないって意味では同じ悩みだし、せっかく話相手ができたと思ったのに。」
「・・・いえ。私なんかでよろしければ。」
「ふふ・・・ありがと。さて、とりあえずはオリガの悩みよね。女性として見てもらいたいなら、もう少し、化粧っ気をだしたほうがいいと思うの。最近じゃエドでさえ化粧をするようになってきたわけだしね。」
「しかし化粧の経験なんて生まれてから数えるくらいしか無いですよ。イデアでの祝勝会の時と、マタイサから凱旋する時にジゼル様の侍女がして下さったくらいで・・・。」
「あら、そうなの?私も少し直すくらいはできるけど、普段はメイドにやってもらってばっかりで人に教えられるほどじゃないし・・・じゃあ、ついでだし一緒に習いましょうか。」
「習うって、誰にですか?」
「あなたもよく知っている人。」
「アンドラーシュ様ですか?」
 小首をかしげながら尋ねるオリガの言葉を聞いてジゼルが凍りついたように固まる。
「・・・・・・その発想はなかったわ。」
「違うんですか?」
「違うわよ。あなたの友達に居るでしょ、化粧で若い男を手玉にとる悪い女が。」
「カーラ様ですか?ですが私とカーラ様は友人なんてそんな恐れ多い・・・。」
「・・・それ、カーラの前で絶対言っちゃダメよ。大体彼女は別に若い男を手玉に取ったりしてないし。・・・まあ、これ以上オリガの問題発言を引き出してもしょうがないし、ハッキリ言うとアリスよ。」