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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 3 蒼雷

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3章 蒼雷



 同盟関係にあるはずのマタイサが打倒アレクシスを掲げて蜂起したという報告がアミサガンの街に入ったのは、アリスたちがマタイサ軍を率いて出発してから2日ほどたった時だった。
 この報を聞いたリュリュはカズンの作戦通りに街の守備を展開。アリスたちが街を取り囲んだ時には、既にアミサガンの守りは鉄壁の物となっており、それを見たアリスは攻撃を仕掛けずに軍を一旦、アミサガンが一望できる丘の上へと引いた。
「さてさて。どうしましょうかね。」
 天幕の中で街の見取り図を眺めながら、アリスが苦笑を浮かべてつぶやいた。
「どうしましょうかねとは、どういうことだ。何故奴らは既に我々を迎え撃つ準備をしているんだ。アレクシスがいない今が好機だと言ったのはアリス殿、あなただ。それを攻めあぐねるとはいったい・・・。」
「すみませんが。」
 アリスは射るような視線でグラールを見て、強い口調で彼の言葉を遮った。
「少し黙っていてもらえませんか?今いいところなんですよ。」
「ぐ・・・。」
 アリスの視線と言葉に射抜かれて、グラールがよろよろと2,3歩よろけるように後ずさる。
「すみませんね。アリスは考え事に集中すると、ああなってしまうんです。彼女はあれで結構負けず嫌いなんで、相手がいい手を打ってくるとムキになってしまうんですよね。」
 よろけるグラールの肩を受け止めながらアンドラーシュがそう言って笑った。
「で、では何かいい案が出るのか?」
「さあ、どうでしょう。アリスが向こうの軍師のカズンを知っているように、カズンもまたアリスの事をよく知っていますからね。しかも向こうは本職の軍師、アリスは軍師としても将軍としても優秀ですけど器用貧乏なところがありますから、よくて相討ちでしょうか。」
「そうだ!今朝方アミサガンに居る間者から、こちらの動きに呼応して門を開くという連絡があったのだ。これを使えば。あの門を抜くこともできるのではないだろうか。」
「ああ、それですか。うーん・・・。」
「どうしたんだ、アンドラーシュ殿。何を困ったような顔をしている。」
「いや、多分その作戦はもう潰されてますね。さっきアミサガンの街に迫った時に門があかなかったのが何よりの証拠です。」
「潰・・・・・・。」
「まあ、どちらにしても結果は変わらないんですけどね。・・・アリス、もういいだろ。続きは全部終わってからにしろ。」
「でももう一手だけ試したい手が・・・。」
「そんなことして万が一大きな被害が出たらどうするんだ。いいからもうおしまいにするぞ。」
「はいはい。わかりました。・・・ではグラール様。アミサガンに参りましょうか。」
「おお、では何かいい案がある?」
「ええ。この作戦ならば、兵に被害を出さずに、グラール様を街の中枢にお連れすることができます。」
「それはすごい。では早速その作戦を教えてくれないか。」
「まず、この作戦はグラール様と私とアンだけで行いますので人払いを。万が一敵のスパイが紛れていては大変です。」
「うむ。」
 グラールがうなずいてそばにいた兵士たちを退室させた。
 全員が室内から出ていったところで、アリスはおもむろにロープを取り出してにっこりと笑う。
「次に、グラール様を拘束させて頂きます。」
「なっ・・・貴様らまさか」
 ここへ来てやっとアリスとアンドラーシュの真意に気がついたグラールは二人から距離を取ろうとするが、それよりも早く、アンドラーシュの剣がグラールの首元へつきつけられた。
「お静かに。我々は別に貴方の首も、マタイサ軍の全滅も望んでいませんから。おとなしくついて来ていただければ御身の安全は保証いたしますよ。もちろん抵抗なさるなら、貴方も貴方の兵もただでは済みません。」
「く・・・。」
 グラールはアンドラーシュの言葉に悔しそうに歯噛みすると、諦めたようにがっくりと肩を落とした。