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檀上 香代子
檀上 香代子
novelistID. 31673
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家族の鎖

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和       知之さんがきてからでいいよ。

薫       昭ちゃん、相変わらずだったね。面会にあんなに、

        かあちゃん来たあって喜んですっ飛んでくるのに--        

和       そうね。持って行った海苔巻きを口に詰め込んで、

        ゆっくりお食べって言っても、返事だけうんうん--

薫       着替えを重ね着して、面会室の人に見せて廻って、

和       傍に来たと思ったら、バイバイ帰るだもんね。

        十分も傍にいない。

薫       でも、母ちゃん、ものは考えようだよ。家に帰ると

        駄々をこねられると辛くせつなくなるだけだもん。

        それに一人じゃないから。

和       -----そうだね。

薫       きっと、病院の人たちが、やさしいから自分の家だ

        と思っているんだよ。


      知之が入ってくる。薫、台所へ向かう。


和       疲れたでしょう、知之さん、ごくろうさまでした。

知 之     いや、お義母さんこそ、長時間の車でお疲れでしょ。

        大丈夫ですか。

和       ええ大丈夫。知之さんこそ、今日は夜勤明けなのに。

知 之     ははは、若いですから。これから一眠りすれば元気

        復活ですよ。お義母さんや薫は僕の家族ですから、

        気を使わないでください。


      薫、お茶を持って入ってくる。 


薫       お布団敷いといたから。

知 之     (お茶を飲んで) じゃ、一眠りします。 
     
     (知之、部屋を出て行く)

和       薫、知之さんを大切にしなさいよ。

薫       わかっている。でも、知之さん、いつも言っている、

        親の顔も知らずに育った僕にとって、おかあさんは

        薫のお母さんだ。親孝行の真似ができて嬉しいって。

和       本当にありがたいわ。いい人を息子に持てて。

薫       ふふ、私の目があったでしょう。施設育ちの男と結

        婚させるなっておじさん達反対したけどね。

        私は感謝してる。 あら、お茶さめてる。新しいの

        をいれる?

和       そうね。もう少し、こうしていたいわ。

薫       じゃ、入れ替えてくるね。
      

      薫、台所へ立つ。和、ふと思い立ち立ち上がりかけて、
      そのまま座り込み倒れる。薫入ってくる。


薫       おかあさん! (暗転のなか救急車の音。)
      

          二  場


     病院の一室。  付き添う薫。


和      (弱弱しく)薫、薫

薫       なに? どうして欲しいの?

和       苦しいから、体を起こしたい。

     薫、抱きかかえるように状態を起こす。

薫       (和の背中をさすりながら)少しは楽になった?

和       うん。------- 苦しいから寝かせて

     薫、言われたとおりにする。

薫       先生を呼んでもらうからね。

     薫。 枕もとのブザーを押す。

和       また起こして--------- やはり寝かせて

     薫、病室のドアを開き廊下を見る。母の傍に戻りかけると
     看護婦がくる。

看護婦     どうしました。

薫       母が苦しいようなので、先生に診て頂きたいのですが

看護婦     どんな風に?

薫       寝かせたも体を起こしても、二、三分すると苦しくな

        るようで

看護婦     さっきくすりを打ったところで、その副作用ですから

        我慢しなきゃ。

薫       見てられないのです。先生をお願いします。

看護婦    (不満そうに)じゃ、先生に連絡してして見ますから、


      看護婦、部屋を出て行く。


薫       おかあちゃん、今先生が来るから少しの辛抱してね。

        (落ち着きなく)もう‐‐‐‐、すぐだから‐‐、

        すぐ先生来るから‐-‐‐‐‐


      医師と看護婦がくる。医師、和の様子を見て、


医 師     すぐ、酸素吸入器、すぐ、集中治療室へ

       
      慌しい雰囲気の中で暗転



           三 場


      上手前にお骨を抱いて薫が立っている。(スポット)
      下手奥より、昭雄がうれしそうに走って出てくる。


昭 雄     (大声で)姉ちゃん、来たあ~

看護士     あきちゃん、お姉さんでなく妹さんでしょ。

昭 雄    (ふと止まって)かあちゃんは?(辺りを見回して) 

        ポンポン、痛い?

薫       あのね、かあちゃん死んじゃったの。

昭 雄     死んだ? ふ~ん(理解してない、立て続けて)

        マンマ持って来た? オブ?(服)(パントマイ

        ムで服を着て、おにぎりを口いっぱいに頬張る。

        満足げに)うん、帰る。バイバイ。

看護士      (帰りがける昭雄に)あきちゃん、もう少しここ

        に居てあげなさいよ。

昭 雄     うん、(薫に向かって)帰る。バイバイ。

看護士     せっかくいらしたのに。

薫       いいんです。これからも兄の事よろしくお願いし

        ます。

看護士      ええ、安心してください。(去る)
                           暗転

          
           四 場


       墓場、薫、知之、良子、辰夫


薫        かあちゃん、あきちゃんがきたよ。

知 之      (薫をいたわるように肩を抱く)

辰 夫      お義姉さん、ずっと、心残りだったもんな。

薫        あのね、かあちゃんが居なくなって、昭ちゃん、

         お姉ちゃんから母ちゃんになったんだよ。

知 之      君はお母さんにだから。

良 子      お義姉さん、知之さんもかおるちゃんも、よく

         頑張ったよ。 東京に転勤で、遠くなったのに。

         面会に足を運んでさ。

辰 夫      お義姉さんも、昭雄が傍に来てほっとしてるだ

         ろう。

良 子      重い鎖だったものね。薫ちゃんはこれから知之

         さんとお腹の赤ちゃんとの生活を大切にね。

薫、知之     はい、ありがとうございます。


       辰夫と良子去りながら


良 子     これで、あの子達もやっと、重い鎖から解放さ

        れたわね。

辰 夫     鎖って?
作品名:家族の鎖 作家名:檀上 香代子