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巨岩の絵

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 富沢は嬉しそうにちょっとだけ少年に絵を見せた。
「この絵はこの前の田んぼと畑と山の絵よりはいいね。見直したよ」
 少年は本当に感心したような顔で云った。
「ありがとう……ところで草太。絵というものはな、極端なこと云うと、何も見ないで描いたっていいんだ。だけど、モチーフなんてことば、誰に教わったんだ?」
「この前の、テレビの番組」
 老人と少年は歩き辛い河原を歩き始めた。
「お前、油絵描きたいんだろう?」
「そうだなあ。描きたくもないけど、富沢さんは教えたい?」
「教えることは勉強になるって云うけどなあ、面倒だな、そういうことは」
「どうしても教えたいって思うんだったら、俺、生徒になってもいいぞ」
「まだ小学生だよなあ、草太。やってみるか?」
「だからさあ、どうしても教えたいのかどうかだよ。問題は」
 教えることは無意味ではない筈だが、たとえ相手が小学生であっても、間違ったことを教えるわけには行かない。専門的なことを勉強したことのない自分に、そういうことが許されるのかどうか、すぐには結論を出せないと富沢は思った。
作品名:巨岩の絵 作家名:マナーモード