レゾンデートル2
ラグナスはカウンターを飛び越え、迷い猫を入れるかのように扉を少し開けて呆れ声で言った。
「恥ずかしがらずに入ってこい。」
「別に恥ずかしくなんてないもん。」
ぶつけて赤くなったかもしれない額と涙目になったかもしれない目を隠しながら、小走りで入ってきたのは、白いフラワーガールのような服を着た黄緑色のボブヘアーをした小さな女の子だった。
一生懸命カウンター席に座ろうとしていたが、両手が塞がっていたため座ることが難しそうだったので、ユーリは椅子を引いてあげた。
なんとか椅子に座ることができた子供は、軽く感謝した。
「初めまして!私はルン。ルン・エリザベス。本名とコードネームは同じだよ。ちなみにゲーム歴1年!」
「挨拶する時くらい手外したらどうだヤングレディー。」
後ろから子供の手をゆっくりと外したラグナスに、額を赤くしたルンは頬を膨らました。
「そんなの僕の勝手ですう。」
手が外れたのをきっかけに金色のつぶらな瞳が現れた。ぱっちりとした二重瞼に幼い顔立ちの子供がこの『バウンティーハンター』にいるなんて、想像がつかない。ましてや1年も前から始めていたなんて、、、。しかも女ときた。
「俺はルナ。18歳。」
「へえ私と10歳差か!よろしくねユー兄!」
小さな手がユーリへと握手を求めてきた。だが、頭の中で何かがよぎった。今何と言ったか、それとも聞き間違いか。それとも幻聴か。
「驚いてるね。でもなぜ知っているかは教えなーい。」
無邪気な笑顔を向けられたユーリは、それ以上問い詰めようとはしなかった。現実世界の名前を知られても別にいいと思っていたが、ここの世界のコードネームの意味は、、、。
「今回のミッションを詳しく話していなかったんだが、今回は、ペアを組んでもらう!ルンと。」
「冗談じゃねえ!俺はまだやるとは言ってねえし、子守りしながらなんて尚更だ。」
ルンは“子守り”という言葉に反応し、再び頬を膨らませ、椅子からぴょんと効果音が出るような飛び方をした。
「子守りされるほど僕は落ちぶれてないよ!このド素人!。」
「なんだとこのチビ!」
「なんだとはなんだ!」
二人の間にバチバチと火花が飛び散る中、ラグナスは先ほどの分厚い本開き、どの名画を盗みに行かせるか選んでいた。