霊感テスト
さすがに全く眠らないわけにはいかない。 はるかは、授業中、いねむりをするようになった。
ところが、うつらうつらしてくると、急に悲鳴を上げて、席を立って走り回ったりするようになった。
とうとうはるかは入院した。
落ち着いたころを見計らって、みんなでお見舞いに行くと、ずいぶん元気になっていた。
「真希ちゃん、わたし退院したら引っ越すの」
はるかはうれしそうだ。
「え? どうして? さみしいじゃない」
「うん。家が…」
「家?」
「こんなこと言うと、真希ちゃんがいやな思いをするといけないから」
はるかはためらっていた。
「なによ。大丈夫だから言って」
「うん。真希ちゃんは霊感ないから、だいじょうぶかな」
自分に言い聞かせるように、はるかは重い口を開いた。
「わたしの家ね、正確に言うと、真希ちゃんちとわたしの家だけど……。その場所には、大きな一軒の家が建っていたんだって」
初めて聞いた。たぶん、うちのお母さんだってそんなこと知らないと思う。
「庭も広くて、その辺一体を分譲地にしたんですって」
「ふうん」
「でね、その大きな家で、昔、殺人事件が起きたんですって」
「ええ?」
「殺された人はその家の息子さんで、死体は見つかっていないそうよ」
話を聞いていて、わたしは鳥肌が立った。
「わたし、入院する前に、霊媒師さんに見てもらったの。そしたら、わたしの目の前に現れるのは、どうもその殺された息子さんみたいなの」
退院したはるかは、同じ町内のマンションに一家で引っ越した。
いっしょに学校へ通うことはなくなったけど、学校へいけば元気なはるかに会える。
霊感テストで、はるかに霊感があったことがわかったけど、おもしろ半分にやると、思わぬ結果になるってことも身にしみた。
もう二度とやらないことを心に決めて、わたしは本を焼き捨てた。
それにしても、はるかが言ったことが、わたしには妙に気になった。
空き家になったはるかの家は、なんだかうす気味悪くみえる。
殺された人がどこに埋められているのか、霊媒師さんにもわからないのだろうか。
そんなことを考えながら、毎日過ごしていたら、いつのまにか、空き家のはずのとなりの家の窓に人影がみえるようになった。
はじめはちらっと、影のようにみえていたけど、だんだんと人の形になってきた。
男の人だ!