卒業
電車は僕らを街から田舎へ連れて行く。暗闇の向こうの景色は、今頃畑ばかりになっているだろう。
最後の1人がいなくなると、ついに僕は独りになった。周囲を見回しても誰もいなかった。誰もいないのだ。
乗客はまばらになっていたが、その誰もがマネキンのようによそよそしかった。電車がゆっくりになって、いつものホームが目に入ってきて、ようやく止まった。操られるような足取りでよたよた外に出ると、朝のような凍てついた風が肌を舐めてきた。それでもいくらか柔らかいのは雨が降ったせいだ。
改札を通って駅の外に出る。それから2,3歩進んで、何かありはしないかと思って後ろを振り返った。朝見たのと同じような駅があった。そしてその奥に、見慣れた赤い電車の止まっているのが見えた。