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お帰り!

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寒い寒いと
つい外に出る時間が少なくなっている
遅れていた梅の花のも咲いているようだ
今日は暖かいし休日だから散歩に行こう
そうだ亡妻の墓参り
桜は記憶にあるが梅はあっただろうか
それはどうでもいい

散歩ではなくサイクリングだが
寒くて縮こまっていた身体が
この暖かさで動きやすく 喜んでいる

さてお墓
線香をあげてしまったらすることがない
久しぶりなので照れる……という感情も変な話だ
でも 長くいる場所ではない
まして一人
だが
たまに来て すぐ帰るというのもなあ
えっ もう帰るの……という声が聞こえるようだ

広いこの霊園 樹木も多い
じゃあ ぐるっとサイクリングしてこよう
彼岸前 まだ陽は短くもう西に傾いている
少し冷えてきたので 走れば丁度いい

碁盤目のような道路だが
気分にまかせて曲がったり真っ直ぐだったり
もう道がわからないぞ
案内板は無いのか もう日没寸前だ
目印になるものは……
お墓ばかりだからどこも同じに見える
まずいぞ 人に聞こうにも誰もいない

そうだ 
車の音のするほうに行けば何とかなるだろう
少ない街路灯と自転車のライトの灯りを頼りに走る
もうかなり体力を使って
身体が熱いような寒いようないやな汗をかいている

何やってんのよ
妻の声が聞こえた気がした
ああ またやってしまったよ
オレはぎこちなく照れ笑いしたかも知れない
こっちよ
もう何も考えることなく自転車を進めた

ああ 見覚えのある風景だ
妻の声が聞こえた

「お帰り!」
作品名:お帰り! 作家名:伊達梁川