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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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 高田町は田園と里山が広がるのどかな田舎町で花火工場がたくさんある町だ。たくさんと言っても地方の田舎町にしてはであり、狭い業界の中では一応全国には知られている。そもそも花火は危険物だから都会の真ん中で作るわけにはいかない。言い方は悪いが「爆発しても被害が及ばない田舎」に花火工場は点在している。
有田健三が働く工場は竹林で囲まれた、小高い山の入り口に門を構えていた。国道から離れた目立たぬこの場所は、夜空を華やかに彩る花火が作られてるとは思えないほどひっそりしている場所だった。
 健三はもともとは銀行員だった。無口で感情を表に出さない健三は、男らしいといえば男らしいのだが、花火師という一風変わった職業に鞍替えしたのは夜空に輝く大輪の花のような花火に心奪われたからだ。乙女のように心が舞い上がったからだ。実際、いかつい雰囲気に似合わず庭の花は全部健三が手入れをしていた。美しい物を愛でる気持ちを持つ男は、殺伐とした金勘定のコンクリートの箱の中で過ごす一日に耐えられなかったのであろう。妻の美香の反対も押し切り、あっさり転職してしまった。
 一度決めたら後には引かないタイプだから、そういう頑固なところは職人肌に合ってるのかもしれない。