アイスエンジェル
一体どれくらい時間が経過したのだろうか。
僕は首を動かして窓の外を見る。いまだに外は暗く、吹雪が窓を打ち付けている。カタカタと揺れる窓の外には粉雪が舞い落ちていた。
何か喋ろうとしたが、口が動かなくなった。
当然だ。僕の能力はモノを凍らせる能力だ。自分を凍らせているのだから、口も麻痺して動かなくなる。
杉本はたまに苦しそうな表情になる。口の泡を拭いてあげたけれど、たまに真っ赤に染まった泡を吹いていた。まだまだ予断を許さない状況だった。
華彩の治癒能力をもっと早く施すべきだった。今更言っても遅いのだけれど、杉本の容態は思った以上に深刻なのかもしれない。
僕の身体は冷たくなる。華彩を抱きしめる両腕にもはや感触はない。手は青白くなり、いつの間にか鼻水すらでなくなっていた。
やっぱり、僕は人間だ。この能力は人間の限界を超えている。
「ねえ、吉岡くん」
いつの間にか、再び華彩の頬に汗が滴っていた。
「ごめん、気を抜いてたみたい」
「ううん、これは違うの。私は大丈夫だから。でも……」
その続きはなんだったのだろう。僕は彼女の言葉を最後まで聴くことはできなかった。意識は途切れ、やがて何も見えなくなった。