小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

『喧嘩百景』第10話榊征四郎VS碧嶋真琴

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 

   榊征四郎VS碧嶋真琴

 「待って下さい、お姉さーん」
 「やだ――――――っ!!」
 碧嶋美希(あおしまみき)は帰宅途中、木刀を持った怪しい男に追われて逃げ回っていた。いや、追ってくる男を美希は全く知らないわけではなかった。クラスは違うが同じ高校の同じ一年生だ。名前だって知っている――榊征四郎(さかきせいしろう)。剣道部が獲得に躍起になっている期待の新人でちょっとイイ男だ。
 しかし。
 いくらイイ男でもいきなり同級生を「お姉さん」呼ばわりすることはなかろう。
 美希はガタイのイイ好青年に出会い頭に土下座で「お姉さん!!」と呼び掛けられて跳び上がった。
 「やだー!!何でボクんトコに来(く)んのさーっ!!」
 硬派の代名詞のように噂されていた榊征四郎がよもやこのような行動に出るとは、彼のファンクラブを作ろうとしていた女生徒たちには想像もできまい。
 美希の旺盛な想像力を持ってしても容易には想い描けない現実がすぐそこまで迫ってきていた。
 二人の後を、美希の相棒の不知火羅牙(しらぬいらいが)がにやにや笑いながら飛ぶような足取りで付いてくる。何とかしてやろうというような気は全くなさそうだ。
 「お願いしますっ、話を聞いて下さいっ」
 人気(ひとけ)のない路地に美希を追い込んだ――と言うより、美希の方が人目を憚(はばか)って逃げ込んだのだが――征四郎は、また地面に手を付いて頭を下げた。
 「だーかーらー、そういうことすんのやめてってば」
 美希は征四郎の腕を掴んで手を上げさせた。
 話を聞いてやろうにもさっきから立ち止まると土下座をしてしまうので、人通りの多いところでは話もできない有様なのだ。
 ――ボクのことを「お姉さん」呼ばわりするくらいだから用件は判ってるけどさ。
 美希は征四郎を立たせて膝を叩(はた)いてやった。
 「お姉さんっ!!」
征四郎は美希の肩をひっ掴んで正面から見据えた。
 その背後で堪(たま)りかねた羅牙がぷっと吹き出す。
 「真琴(まこと)さんとのお付き合いを――――」
と、征四郎が言いかけたとき。
「貴様っ!!姉上に何をしているっ!!」
良く通る高い声とともに小さな影が二人の間に降ってきた。
 紺のセーラー服。
 白いリボン。