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キラーマシンガール 後編

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 「おかしい、全部おかしいですよ。なんで日向さんが死んでるんですか。白雪がどうして人を殺すんですか。操さんはどうしてそんな平気な顔をしてられるんですか。僕は、僕はどうすればいいんですか……」
 脳みそが噴き出しそうなくらい頭が痛かった。帰りたい。帰りたい。
 「どれもよくあることよ。子供が人を殺すのも、部下が殺されるのもね。何度も見ていれば慣れるわ。でも、多分あなたのような反応をするのが正常なんでしょうね。私も配慮が足りなかったわ。私の普通とあなたの普通は大きく違うってことを少し忘れてた」
 優しい声色で話し、僕の隣に寄り添う操。
 「私を信じて。絶対悪いことにはならないから」
 「……それだけですか?」
 「だって、今のあなたには何言ったって信じて貰えそうもないから」
 操はちょっと怒ったような口ぶりでそう言って微笑んだ。
 「……それもそうですね」
 何故か僕もつられて笑ってしまった。
 「今日はもう遅いし寝なさい。この部屋使っていいから。警備はしっかりつけておくから安心していいわよ」
 「侵入者は……みんな死んでしまったんですよね」
 「そうね。白雪がやったんだから間違いなく死んでいるはずだわ」
 「どういうことなんですか、白雪が人を殺すなんて……。彼女は一体何者なんですか?」
 「機械義肢ってね、使い方によっては普通の人間を遥かに越えた力を出すことも可能なのよ。それであの子にはその体を使ってちょっと仕事をしてもらってるの。だからああいった技能に長けているのよ」
 「仕事?」
 「情報の収集とか、暗殺とかね」
 「暗殺……」
 先ほどの映像が脳裏に蘇る。血まみれの白雪。
 「唯史、この世界には人を殺すのを生業にしている人はたくさんいるけど、それらがすべて悪人というわけではないのよ。白雪もそう。仕事をしてないときはただの女の子なの。少なくとも、あなたの前ではそうありたいと思っているはずよ。だから私は、あなたと白雪はいい友達としてやっていけるって思ってる。育ちや境遇が全く違ってもね」
 それからいくつか言葉を交わし、操さんは部屋を出ていった。今日からはここが僕の部屋になるそうだ。
 ベッドに横になっても眠りはなかなか訪れなかった。人殺しの白雪。彼女は僕を助けるためにあの男達を殺したけど、それは正しいことなんだろうか。彼らが日向を殺したことはそれとどういう違いがあるのだろうか。日向の死と男達の死。それと別れ際の白雪の悲しげな顔が眠りに落ちるまでずっとちらついていた。