雪解け
高原まどかは、中学からの同級生だった。俺たちはそれなりに成績も良く、志望校も同じだったので、わりと仲は良かったように思う。同じ高校に行って、もしかしたらクラスも一緒になって、テストの点数で張り合ったりして。お互いに恋愛感情などはないものの、腐れ縁的にこれからもずっと、付き合いがあるんだろうなという程度に俺は考えていた。
ところが中学三年の半ばに、俺は少々厄介な病気を患ってしまった。二学期を目前にして入院生活を余儀なくされ、いよいよ受験に向けて本腰を入れ始める友人たちとは、必然的に疎遠になった。俺もなんとか自分で勉強を進めようとしたが、そんな俺自身の焦りや努力とは無関係に、治療期間は延び続ける。結局、病気は完治したものの、俺は受験を一年遅らせる決断をせざるを得なかった。
次の春には希望通りの高校に入れたが、見知った同級生たちはすでに「先輩」だった。その中には、高原もいた。高原は俺とすれ違っても、目を合わせるか、合わせないかという程度で、言葉を交わそうとすることはない。渡り廊下で、図書館で、ピロティで、幾度と無く遭遇したが、その距離は決して変わらなかった。俺が漠然と思い描いていた、ほんの少し先の未来。それは、容赦なくのしかかる「一年」という重みによって、あっけなく瓦解した。
ところが中学三年の半ばに、俺は少々厄介な病気を患ってしまった。二学期を目前にして入院生活を余儀なくされ、いよいよ受験に向けて本腰を入れ始める友人たちとは、必然的に疎遠になった。俺もなんとか自分で勉強を進めようとしたが、そんな俺自身の焦りや努力とは無関係に、治療期間は延び続ける。結局、病気は完治したものの、俺は受験を一年遅らせる決断をせざるを得なかった。
次の春には希望通りの高校に入れたが、見知った同級生たちはすでに「先輩」だった。その中には、高原もいた。高原は俺とすれ違っても、目を合わせるか、合わせないかという程度で、言葉を交わそうとすることはない。渡り廊下で、図書館で、ピロティで、幾度と無く遭遇したが、その距離は決して変わらなかった。俺が漠然と思い描いていた、ほんの少し先の未来。それは、容赦なくのしかかる「一年」という重みによって、あっけなく瓦解した。