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REKISHI

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♜1 僕の道

  迎えた星、迎えた時、そして迎えた体。
  ここに来る前、先生は言っていた。
  「君は伊藤博文になるのです。」
  先生の言葉は、まるで暗示かのように頭の中をうごめいている。
  クラスメイトの顔を忘れ始めているのは気のせいだろうか?
  ・・・
  体が軽い。
  ・・・
  体が狭い。
  ・・・
  ・・・
  思い出した。
  使命がある。そうだ、僕には使命がある。行かなければ。
  4つ足なら立ち上がれる。僕は、何かを探しにこの広い町に足を踏み出した。

♞2 おいらの道

  「総裁、どこかに飛んでいった【モデルクローン】が地球で見つかりました。」
  「チキュウへイッテイタカ」
  「すぐさま、取引先の星へ送りましょう。」
  「イヤ,フリョウヒンナド,イラナイ」
  「あのクローンがいないと、スタン星での戦争が起きませんよ。」
  「カマワナイ。アタラシイノヲツクレ」
  総裁に仕えるおいらは、今年で13歳になる学習対象生。
  4年位総裁に仕えてきた。
  しかし、いつまでたっても中枢の仲間にはさせてもらえない。
  「ヨウガスンダラ,サッサトデテイケ!」
  「すいませんでした。」
  総裁も切羽詰っているようだが、関係ない。
  「失礼します!」
 
  バタン

  おいらは、扉を勢いよく閉めてやった。

♝3 キカイ・ノ・ミチ

  ナゼナンダ。ナゼ,ウマクイカナイ?
  その機械は、疲れ果てていた。
  ただっぴろい部屋中に、それが発する擬音は鳴り響く。

  その機械は、何かを予感していた。

  「どうしましたか、総裁!」
  中枢のメンバーが駆けつけた時には、擬音は最高潮に達していた。

  ナゼ ?
  ナゼ ?
  ナゼ ?

  中枢たちはどうしていいか分からず、そこに立ち止まってしまった。
  「総裁、どうか休まれてください。」
  
  「・・・ZKT ハ ドウ ナッタ。」
  「まだ回収できていません。」
  「・・・ハヤク カイシュウ シニ イカンカ!」

  総裁は、その日に感じだ「予感」を、もう一度噛み締めた。

♛4 生命の道
  
  皆さん、こんにちは。
  私の名は、モ・スタン。博士をやっています。
  とは言っても、博士ではありません。
  ちなみに、恋愛教の忠実な教徒でもあります。
  しかし、普及活動は行っていません。

  なぜかって?

  ここには誰もいないからです。

  昔、不思議な夢を見ました。
  私は「地球」という名の星で一晩、ある家族に囲まれて過ごしました。

  今、ここには何もないのです。
  愛を叫んでも意味がありません。
  もし、私が本当に存在し、ここに居るのであれば、この世は救われる筈でしょう。
  しかし、私はここにはいない。

  私はスタン星にいなければならない。
  恋愛有無戦争を、主導していかなければならない。
  そんな気がします。

  矛盾が・・・

  いや、待てよ?
  モ・スタンが私だけとは限らない。
  それなら成り立つ。
  だとしたら私は、何故ここに?

  あ,今まで気がつかなかったが背中に紙が貼ってある。
  
  ”不良品”

♘5 私の道

  今日も人参が安く売っていたので、つい買ってしまいました。
  今晩も、息子の大好きなハンバーグです。
  買い物の帰り道、いつも通る川沿い。あの時のことをよく思い出します。

  あれから二年。息子がどうしてもと言うので、来年の1月に私立中学を受けることになりました。
  その学校は、歴史学が優れていて、県内でも有数の名門校と言われています。
  また、歳が歳だけに、好きな子もできたそうで。恋もがんばってね。

  さて、勉強で追われる息子の横から、テキストをこっそりのぞきますと・・・
  出てきましたよ。「地球人」という用語が。
  今はどうしているんでしょうね、博士さん。

  包丁が止まっていました。7時までには作らないと。
  人参とまな板は、軽やかなリズムを取り戻します。
  そして、大地の恵みはフライパンへ________。

  ・・・「お母さん、伊藤博文の過去が明らかになったって知ってる?」
  ・・・「今朝ニュースでやってたやつ?」

♚6 俺の道

  我は、元時間空間テロ組織員、略して「元ZKT員」だ。
  そう、自己紹介に花がないのは、分かっている。
  前にも増して、今に総裁が気に入らない。
  ・・・いや、機械と言うべきかもしれない。

  【モデルクローン】とはなんなのだろうか。
  さっき、隣の部屋から擬音が聞こえてきた。

  果たして今、何が起こっている?

  それを知ることもできず、俺は何をしているんだ。

  早くここからでなければ。
  仲間はまだいるだろう。
  復讐するんだ、星民を代表して。


  見てろよ、ポンコツめ!


 @¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥@¥ 

♝7 無題

  その機械の名をREKISHIといった。

  それは、奴自身が付けた名前である。
  その機械は、燃料を求めず、無限の存在感で支配をしていた。

  どこか寂しげな機械、REKISHI。
  その過去を誰も知る余地はなく、それは存在し続ける。

♜8 僕は・・・

  世界は、広かった。
  しかし、そこには予想していた世界は広がっておらず、何かを変えなければならない気がした。
  僕の名は、伊藤博文。

  またの名を、【モデルクローン】。

  どうにかして、みんなにこの事実を伝えたい。
  この時代、そのためには、偉くなるしかなかった。
  未来を信じて、そして僕は・・・

♚9 俺の復讐

  牢屋では、毎日3食しっかり出るようになっている。
  今朝のメニューも悪くはなかった。

  俺はZKT員。
  多分ZKTは、今も生き続けているだろう。だから「元」はつけない。
  復讐するんだ。あいつに。

  時計は11時50分を回った。
  そろそろ、昼食が運ばれてくる。

  そこで仕掛ける。

  どう仕掛けるかって?

  そりゃ、企業秘密ってもんだ。教えられないよ。

  部屋の鍵穴が、音を立てた。
  俺は、一息ついて立ち上がった。

♞10 おいらの復讐

  逃してしまった。
  ・・・
  ・・・
  おいらは、今まで一度として、牢屋員を逃したことがなかった。
  今日が初めてである。
  しかし、それは今回取り逃がした奴が、テロ組織の代表だったからではないだろう。

  総裁への忠誠心が低くなっている。

  学校で習ったこと。
  モデルクローン育成学校というものがあって、
  そこでは多くのクローンが育てられているらしい。
  その主な輸出先には、地球・ビア星・スタン星などがあり、
  輸出品の割合は、モデルクローンが80%。

  一体、総裁のやりたいことってなんなんだろう。

  とりあえず、今回取り逃がしたことは後悔していない。
  まあ、総裁に伝えに行くか。
作品名:REKISHI 作家名:kuma