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REKISHI

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三,その星

なぜか、私はその男と面識がありました。
今、前にいる男と。

20年前のことだったでしょうか。
私は悩んでいました。叶わぬ恋に。
その時、突然その男が現れたんです。

「愛を叫ぼう!そうすればこの世は救われる。」

まるで、市長演説のようでした。
私は、その言葉に勇気をもらいました。
そして、気がつくと好きな人の家の前に立っていました。

41歳、専業主婦。
もう10歳になる息子は、大好きなあの人の息子です。
夕食を、息子の好きなハンバーグにしようと決めた私は、買い物を終え、家に帰る途中でした。

「愛を叫ぼう!そしてこの世を救おう!」

川沿いに彼は叫ぶ。
まるで、キャッチフレーズのような光景でした。
見間違いではないようです。

年をまったく感じさせない。
いいえ、声だけじゃなく外見も。

小学生のランドセルが、夕日を浴びていました。
「やーい、気違いだ~」
小学生の言葉に彼はしょぼんとしていました。
私は、興味本意で、話しかけてみることにしました。
「どういう職業の方なんですか?」
「自分ですか?名もない博士ですよ。」

彼がハンバーグを気に入ってくれたようで、助かりました。
「素晴らしいですよね、人は自然を愛し、地を愛す。」
夫は困っているように見えました。
しかし、彼の存在は、私たちにとってかけがいのないものなのです。
「これ、大地の恵みじゃないですか。」
「人参をいれました。」
「素晴らしい!人間は地球が誇れる動物だ!」

彼は叫ぶ。
「地球の人、地球人だ!」
地球人。初めて聞くその言葉に、私たちは感動しました。

彼は、帰って行きました。地球人と叫びながら。

しかし、1年くらいたった頃、気づいてしまったのです。

地球人
地球の人

地球の人?
地球の?

満点の星空で、何かが光ったような気がしました。
彼は帰って行ったのでしょう。自分の星に。
作品名:REKISHI 作家名:kuma