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女の子なのに男の子。良質のBL~たかがBLされどBL②~

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私がもう長らく愛読している作品に〝少年舞妓千代菊かゆく!〟

というシリーズがあります。

 タイトルだけ聞けば、かなり奇抜ですが、内容は至っておとなしめです。

 京都祇園のお茶屋吉乃屋のひとり息子岡村美希也は中学一年生。

 置屋というのは、舞妓さんや芸妓さんを抱えているお店のことです。

 吉乃屋は置屋とお茶屋を兼ねています。ちなみに、お茶屋というのは

 お客さんが芸舞妓と遊ぶ場所-座敷を提供します。

 美希也の母が吉乃屋の女将。置屋やお茶屋の女将はかつて自身も芸舞妓

 だたという経歴を持つ人が多いけれど、美希也のお母さんはそんな中では

 珍しく嫁いできた人、元々は祇園町の人ではありません。

 吉乃屋の息子だった美希也の父親は彼がまだ乳飲み子の頃に亡くなり、

 母親は女将をしながら、美希也を育ててきました。

 そんなある日、吉乃屋の舞妓の一人が七月の暑い盛り、突然、姿を消して

 しまいます。既に、この舞妓にはたくさんのお座敷の予定が入っており、この

 ままではドタキャン。吉乃屋の信用はがた落ち。

 美希也の母が頭を抱えているのを見て、美希也が一日だけ自分が舞妓になりすまして

 代わりにお座敷に出ると提案しました。

 中1の少年である彼は見た目も小柄で、舞妓の恰好をすれば、まったく男の子だと

 判らない。どころか、可憐な愛らしい舞妓に変身。

 そこで女将の母も意を決し、息子をにわか少年舞妓に仕立ててお座敷に出すことに。

 それが少年舞妓の誕生でした。

 その一日で終わるはずだったのに、何故か人気舞妓になってしまい、引こうに引けない

 情況のまま月日は流れてゆくーという設定で話は進みます。

 このお話の中での見所は、何と言っても千代菊にひとめ惚れしたといって

 熱烈にアタックし続ける楡崎慎一郎の存在でしょう。

 彼は実業界のカリスマと呼ばれる大企業グループの御曹司でありトップ。

 しかもバツイチで独身。祇園町の芸舞妓たちからも楡崎の若様と呼ばれ、

 VIP待遇を受けている大切なお客様。

 この31歳のイケメン御曹司と千代菊の恋愛? 模様は時にハラハラドキドキ、

 時に切なく涙を誘います。

 相手の男性が千代菊を男だと知らないので、余計に話はややこしい。

 そして、千代菊である美希也も最初は何かといえば押し倒そうとしたりする

 楡崎をエロ親父扱いして嫌っていたのに、いつしか彼を好きになり。。。

 人間としても男とても魅力的な彼。強引のところもあるけれど、それは

 千代菊を本当に好きで好きでたまらないから、その気持ちの裏返しなのです。

 しかし、自分は本当は少女ではなく少年。

 その事実を知らずに一途に愛を囁く彼に千代菊は罪の意識を感じるようになります。

 その一方で、また歳の近い男の子との恋愛も見逃せません。

 天才少年騎士-高校生でありながらプロ棋士とて活躍す紫堂薫ーこちらも

 超絶美形少年ーと運命的な恋に落ちます。

 紫堂は師匠の棋聖の元に内弟子として住み込んで修行中。

 恋愛は禁止されている身、また千代菊も未成年であり、舞妓であることから

 私的な恋愛は禁止されている。

 その中で二人はたまに逢い、互いの気持ちを確かめ合う。

 楡崎との関係よりも更に切なく胸を打ちます。

 千代菊の中には、楡崎と紫堂への想いが同居して、いわば三角関係です。

 たまに三人がぶつかる場面も出できて、楡崎の独占欲をむき出しにした様子、

 紫堂少年の年の割にはクールなのに、千代菊のこととなると別人のように

 熱く情熱的になり、父親ほどの楡崎に真っ向から挑んでいくのもなかなか。。。

 この作品の初刊本が出たのは、何と十年前。

 私はそのときに知り、買いました。

 ちょうど、次女がお腹にいると判ったばかりの頃。

 あれから十年、次女は今日、10回めの誕生日を迎えます。

 作者の奈波はるか先生はコンスタントに新刊を出される作家さんで、

 初期は特にこのシリーズも間を置かずに新刊が出ました。

 なので、私は次女を出産した産院で、新刊を読みふけり-笑、

 先生にファンレターも出したんです!

 こういうのは出してもほぼ100%の確率で返事はありませんが、奈波先生は

 遅くなっても返事は必ず出しますと書いてあったので、出してみました。

 すると、本当に直筆のお返事を頂けて感激でした。

 しかも、千代菊のイラスト入りのオリジナル便せんで。

 先生は京都大学の大学院におられたようで、私も京都で大学時代を過ごした

 ことに触れると、ちゃんとそのことにもお返事が書いてありました。

 しかも便せん二、三枚にびっしりと!

 忙しい売れっ子、しかもプロの作家さんでこういう方は珍しいでしょう。

 その後、千代菊シリーズは健在で、現在は47巻まで出ています。

 いつもは書店で買うのですが、たまたまアマゾンで別商品を探していたときに

 最新刊か゛出ていることを知り、すぐに購入しました。

 自慢にもなりませんが、10年間、ずっと新刊が出る度に購読して今日に

 至っています。

 その後、奈波先生にはもう一度、ファンレターを書きました。

 確か末っ子の第4子を出産したときだと思います。

 産院で入院中は暇だったこともあるのですが、先生は私のことをちゃんと

 憶えいらっしゃり、やはり直筆のお返事が届きました。

 お子さんは元気に大きくなっていますか、育児は大変でしょう。。。

 というようなことも書かれていたように思います。

 奈波先生の人柄というものが感じられて、心が温かくなるような出来事でした。

 この千代菊シリーズ、とにかく面白い、そして引き込まれます。

 コバルトですので、思わず眼を覆いたくなるような露骨な性描写や

 もちろんグロテスクなものも一切ありません。

 ジャンルとしてはもちろんBLですが、内容は純愛、更に一人の少年の心の

 成長を鮮やかに描いた秀作です。

 千代菊は声変わりが始まったら舞妓を止めるということになっています。

 何と現実世界で流れた時間は十年ですが、物語では一年だけ。

 よくぞ十年かかって一年のお話を書き続けられるものだと

 感心というか驚きます。

 それも全然、しつこくなく、そういう多少、矛盾したところなんて感じさせない

 ほど面白く魅力的なのです。

 私が注目して頂きたいと思うのは、千代菊という女の子? のキャラです。

 本当は男の子ですが、この美希也&千代菊がとても魅力的。

 ひとことで言うと、良い子です。

 最初に読み始めた頃、こんな女の子だったら、たぶん身近にいれば

 男性なら誰でも好きになるだろうと思いました。

 とにかく一生懸命で優しい。負けん気なところもあるし、怖い者知らず

 だけど、それもまた彼女&彼の魅力になっています。

 この千代菊が楡崎社長や天才棋士紫堂少年との恋愛で悩み傷つきながら

 成長してゆく様子に感銘から受けます。

 特にオススメは第一巻から最初の数巻めまで。