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マコのおかいもの

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【この話のモデルちゃん】

『マコのおかいもの』の原案には、モデルになっている女の子がいます。
名前も年齢も設定とは異なっています。実は、詳細は知りません。
そのモデルとなった女の子が来店し、久し振りに言葉を交わすこととなりました。
その女の子とのやりとりがとても優しく心に残りましたので 此処にエッセイとして追記綴りたいと思います。


小学校も夏休みになり、子どもだけでお買い物に来るのも珍しくありません。
その女の子もそうだと思いました。
手に色鉛筆セット(10色で長さも10センチ位かな)を持って、レジカウンター内の私の前に来てくれました。
少し大きくなったけど、以前と変わらない可愛い笑顔で~*^ ^* にこにことレジ台に商品を置きました。
「夏休みの宿題するの?」
「それもあるし、お絵かきするの」

色鉛筆546円。ちゃんと、スタンプが一個もらえる価格です。

――店では、金額に応じ磁気で記載されるカードでなく、紙台紙に店印を500円ごとに一個押印します。

女の子は、自分のお財布の中から必要な小銭をトレイに出すとお釣を待っていました。
(あれ? 何か足りない)
「スタンプカードはある?」と聞くと「家にあったかなぁ~」っと はにかんで見つめ返してきました。
「そっか、今日はスタンプ押せるよ。じゃあレシートに押しておくね」
スタンプカード(台紙)を忘れても レシートに記載されるポイント数に押印すると、後日スタンプカード台紙に押印をすることができます。この店、親切でしょ(笑)
とそこに 女の子のおばあちゃんが登場。ご一緒にご来店されていたようでした。
レジスターに表示された金額を ご確認されると「あとから、この子の分も押して」と店内に買い物に行かれました。

でも、私はそんなことできない。いえ、それはしたくありませんでした。
この女の子がどれだけスタンプカードの押印を楽しみにしながら おやつを買いに来たか知っています。でも、金額の足りないおやつでは、押してあげることができません。


私が、初めて会計をしたときに差し出された時には スタンプが一個押してあったカード。
女の子が、何か買ったときに作られたのでしょう。バッグの中に入っていました。

大人にも ご年配の方にも、もちろん子どもにも 変わりなくスタンプカードの利用説明はしていますが、当時、年端もいかない女の子にどのように説明したのかはわかりません。ただ 不親切。決められた台詞のように流してしまったのでしょう。
期待だけさせた、例えば 朝のラジオ体操のスタンプのように 出せばスタンプが貰えるような気持ちだったのでしょう。
来るたびに、おやつのお菓子を買った嬉しい表情が、くもった顔になって帰っていくのです。
いえ、実際にくもった顔をするような女の子ではありません。店員の断る言葉を 頷いて聞いて「そっかぁ」と諦めるのです。
何度めかに 規定違反ですが(店長に何か言われてもいいや)と二個目を押してあげました。
「いつも買いに来てくれてありがとう。今までの分で一個ね」
それは、優しさよりも 私の自己満足であったかもしれません。
交換ポイント数まで辿り着くことは容易でないのに期待だけさせてしまったのですから、可哀想なことをしたのでしょう。
なのにその時、女の子は、にこっとしてきちんと「ありがとう」って言ってくれたのです。

あったり前のように金額が足りなくてもスタンプ台紙を出すお客様もいるのに…。
(そういう場合、少々の不足分や強引な方には 「次回から500円でお願い致します」と、とりあえず押すことになっているのです)


でも、今日は違います。レシートに押して渡してあげました。
ついでに販促用の『ガムのボトルで作る夏の自由工作』というおまけのノート(最後の一冊だった)も渡してあげると、そのショッピング袋を胸に抱えて「すごく嬉しい~」って笑顔を見せてくれました。私は、仕事中でしたが、気持ちが込み上げ 泣きそうでした。

そんなに喜んでくれた子どもなんて何人いたか…

他の買い物を済ませて戻っていらしたおばあちゃんに、「お嬢ちゃんが、いつもスタンプを楽しみにご来店くださったのでレシートに押してお渡し致しました」とおばあちゃんのカードに押さなかったことをご説明し、女の子には「もし、お家にスタンプカードがなかったら おばあちゃんにスタンププレゼントしてあげてね」と言うと、頷いていました。

また一個増えたとしても、まだまだ足りません。
この一個のスタンプポイントが、女の子のお母さんかおばあちゃんかに渡ったとしても 目の前で、自分のお小遣いで買ってスタンプを貰ったことは、喜びとして残るかもしれません。
勝手な憶測ですけれど、私は良いことだったと思っています。
いつも笑顔で帰っていったのに、この日、「いつも買っても 押せないって言われちゃったもん。でも今日は、すごく嬉しい」と、女の子が言った言葉がやるせなかった。

女の子は、バイバイと手を振って おばあちゃんと帰って行きました。

いつもあたりまえに500円以上買える子ってなんなの?
平気でスタンプ要求する大人ってどういう神経!って。

女の子に心洗われた筆者でした。 感動。感謝。
作品名:マコのおかいもの 作家名:甜茶