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独書室

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仕事の机に伏せて眠ってしまった。
 カーテンを明るく照らす陽射しが瞼を通してボクを目覚めさせた。
 ずっと閉められたままのカーテン。キミと選んだ奇怪な模様のカーテンの端をつかむと 一気に開けた。
カーテンレールの軋んだ音は、築年数の経ったマンションだと改めて感じさせる。
 明るく暖かみのある陽射しが部屋に差し込んだ。
 ボクは、両手を上げ、呻きとも濁った鳴き声とも言えない声を発し、伸びをした。
今日もボクの背中の後ろにキミの気配もキミ自身も居ない。
 陽射しは、キミの居ないがらんとした部屋を明るく照らす。

 ボクとこの部屋のことをちょっと振り返ってみようかな。

 ボクは就職の内定を貰い、卒業を前にバイトで多少蓄えた貯金で通勤に便利な場所で部屋を探していた。実家から出るボクなりにこだわりがあったが、探すうちにいつしか消えていた。
それでも、この物件に案内されてすぐにこの空間がボクは、気に入ってしまった。
理由など思いもつかない。凄い出会いとしか言えないが、此処に住むようになった。
 全室フローリング。広めのリビング。まあダイニングの広さも含んでいる。間仕切りのキッチンは、何となく生活感が隔てられているように感じる。
隣の十帖ほどある部屋には、チェストとベッドが置いてあるだけだ。
今の仕事をするようになり、そこでほぼ一日中机に向うのは、どうも気が滅入りそうだと仕事部屋はリビングと決めた。
 大した荷物などボクにはない。好きな本と身の回りの使用しないものが、やや広めのウォークインクローゼットに収まっている。
 「此処に住みついちゃおうかな」とキミが言って半日ほど出てこなかったことがあった。
あのまま住みついちゃえば良かったのにと、今少し思った。
 キミが、来るとちょこんと座っている場所。ダイニングテーブルなんてない。
キミが居るようになってフローリングの床に敷物と座卓テーブル(いや、ちゃぶ台と言ったほうが似合っているだろう)が置かれるようになったくらいだ。
作品名:独書室 作家名:甜茶