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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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 冴子は、希から手紙を受け取ったことを告げ、それを見せた。
 生まれた年は異なるが、同じ受精卵から生まれた双子なのだ、とも。 クローンであることは、誰にも言ってはならないことなのだと、滋も含めて確認し合っている。

「私が殺意を抱いたのは、高科先生から『5歳違いの双子の妹がいる』と教えられ、実験に使われたのだと思って、憎しみが芽生えてきたからです」
と、希は弱々しい声で付け足した。
「トイレを借りる風を装って、書類に見入っている先生の後ろから刺しました。すぐに振りむこうとしたので、も一度背中を突いて、体を反らせた時に前に回って、心臓のあたりを刺しました」
「なんで、大阪の高科さんの家まで行ったんや」
「・・・双子の妹のことを、教えてもらおうと思いました」
 希は顔を背けて言った。嘘を言う時の癖である。
 だが刑事はそれを信じ、追求しなかった。希がしんどそうにしていたからでもある。

 その場で指紋が取られ、冴子と同じ指紋だったが、自白を得たことから殺人犯と断定した。ただし、逮捕勾留は猶予し、在宅起訴がなされることになった。

 村田刑事は、帰り際に冴子に告げた。
「あんたのお母さんのことも調べたんや。すでに知ってのように、高科保氏とは血縁関係になかった事が、はように分かったからや。それにお母さんともな。これで疑問は解けたわけやな」
「なんで、母とも血が繋がってない、て分かったんですか?」
 近藤刑事が代わって言った。
「あなたのお母さん、長岡葉子さんのお姉さんが、忍野村におってやでな、DNA鑑定に協力してもろたんじゃ」