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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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「大迫さん」と呼びかけながら、ドアをノックする音が聞こえた。
「は〜い」と言いながらドアを開けた冴子を見て、その訪問者は驚いた。
「高科さん?」
 驚いた冴子。
 池田署の村田刑事が、もう一人の男と並んで立っていた。男は、「山梨県警の近藤です」と名乗った。
「いやぁ、驚いた。高科さんがここにいてはるとは、思いもしませんでした。高科先生が山梨大学に時々来られてた、という事でちょっと調べたらね、大迫希さんに行き着いたんですわ。それで、伺いたいことがあって来たんです。大迫さんは?」
「具合が悪くて伏せってます」
「おっ、これはショパンの曲やな。ショパンは僕も好きなんです。ええ曲が多いですなぁ。上がらしてもろて、よろしぃか」
 部屋には、録音した、冴子が弾くピアノ曲が流れていた。

「刑事さん、上がってください」
 希の言葉を受けて、どうしたものかと思案していた冴子は、ふたりを希のそばに導いた。
「刑事さん、私が先生を刺しました」
 村田刑事が口を開こうとする前に、希は告げた。
 ふたりの刑事は顔を見合わせて希に近づこうとしたが、冴子がそれを押しとどめた。

「刑事さん、待って。希さんはもう長くはないんです。お願いします。ここで死なせたってください」
「病院へ入れましょう」
「いいえ、お願いします。ここで、私が最期を看取ります」
「冴子さん、でしたな。なんでここに?」
「理由を話したら、ここにおらしてもらえますか?」
「かなわんな。被疑者は、警察病院に入ってもらうことになってるんやが。ここで事情聴取せんならん。近藤はん、どないしまひょ」
「逃走の恐れはないようなので、それでよろしいのでは」