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手袋

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閉められたままのカーテン。開けたところで見えるのは白濁の動かない寒い空。
窓越しに見ているだけ、気持ちまで冷えてくる。
キミと買った奇怪な模様のカーテンのほうが、落ち着くのは何故だろう。
ボクの背中の後ろ……キミの気配が薄い。
いや今、キミの気配どころかキミ自身が居ない。
背中に隙間風を感じながら原稿に書き止めるボクが居る。

気付いたのは、三日前。小春日和の穏やかな日だったと思う。
ボクがいつも通りに机に向っていると、ごそごそと控えめな音をさせ玄関から出かける音。
こんな心地良い晴れの日、ボクに付き合って此処で過ごすのは可哀想だなと思っていたので、キミが出かけてくれたことは嬉しかった。
(何処へ行ったのかな?)
キミの目に映る画像が、ボクの頭の中のスクリーンに映し出されたらどんなに素敵だろうと思った。
まあ、キミも見られては困ることもあるだろうから、その時は、紗を掛けたり、クローズできたりすれば便利だね。などと、ペンを走らせる思考と入り交じりながら、空想世界を楽しんでいた。
だが、日が蔭り始めても戻らないキミ。(どうしたんだろう?)

あくまで『戻って来ない』であって『帰って来ない』ではない。
キミの生活があるのは、本来此処ではないのだから。
この部屋は、ボクの生活のある部屋で、キミは来客という立場。
(ああ、こんな言い方は嫌だなー)
でも、事実。
此処にキミの歯ブラシがあろうと、キミのパンツが…(ウォホン)、キミの愛用品があろうと、キミには別に住まいがある。
どれだけ長い時間を此処で過ごしても、机にヨダレを垂らしてうたた寝していても、キミは誰の温もりもない部屋へと帰っていく。
時には、まだボクが夢の中にいるくらい早朝には来ることがあってもだ。
ボクが気付かないうちに部屋を出たキミが、朝には居る。
「あれ?泊まったの?」と声をかけたが、昨日と服が違うことが何度かあった。
それなのに……

日が蔭り始めても戻らないキミを探しにいこうかと玄関に行くと手袋が片っぽ。
落としたようには見えない置き方で上がり口にあった。
五本指の手袋が玄関ドアに向けて指差しているのだ。
(ははぁー『出かけてきます』ってサインだな。でも片手じぁ寒いだろうな)
ボクは、どうやって温めてあげようかなと考え、にんまりしてしまったことは誰も知らない。
作品名:手袋 作家名:甜茶