小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「舞台裏の仲間たち」 62~63

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 


 「いい話がひとつあるけど、でも・・・内容は複雑だそうです。
 もうひとつ、悪い話もあるそうですが、
 とても大事な話ですので、そちらも是非に聞いてほしいそうです。
 雄二さんの容態については大まかに報告をしましたので
 そちらは安心しているようです」

 まもなく午前0時になろうとしている平日の繁華街は閑散としています。
時絵ママの店でもすでに看板は消されており、入口の小さな明かりだけが
ぼんやりとひとつ点いているだけです。
ドアを開けると、カウンターの向こうで時絵さんが手持ち無沙汰風に
頬杖をついていました。

 「ご苦労さま。
 先ほど、雄二君の奥様から電話がありました。
 突然のことでびっくりしたようですが、大事にいたらなくてよかったわ。
 就職の話も、よろこんでいたみたい、
 まずは、お疲れさまでした。
 遅い時間なのに、呼び出したりしてごめんなさい。
 こちらもさっきまで取り込み中だったの・・・・
 といっても、野暮な話ですけどねぇ。
 あっ、座って頂戴、
 今、一本つけるから。
 レイコちゃんも呑めたわね」

 奥の厨房から、時絵ママの何気ない鼻歌などが聞こえてきます。
徳利を手にして戻ってきた時絵ママは、やはり上機嫌な様子のままです。
注いでもらった緒子を反対の手に持ち替えたレイコが、徳利を受け取ると
時絵にも一杯目を勧めます。

 「時絵さん、ずいぶんと良い事があったんでしょう。
 とりあえず乾杯をしてから、その良いことから話してくださる?」

 レイコの徳利を受けながら、時絵ママが思い出したように頬を染めます。
色白の時絵ママは、上気をすると耳たぶまでがほんおりと桜色にかわります。
そんなママの様子を見ながら、思わずレイコも目を細めています。


 「そうね、長い話になるけれど、
 まずは良い話のほうからはじめましょうか。
 実は十年ぶりに口説かれまして、私は今、しみじみと「女」を
 実感しているところなの。
 柄にもなく、ときめいてしまいました」

 「水商売なら、口説かれるのは日常茶飯事だと思いますが、
 ときめいたとなると、ただ事ではありませんね、
 もしかして、時絵ママを口説いたお相手と言うのは、座長のことですか?」

 「あら、正解だわ。
 台湾でずいぶんと女性を理解してきたみたいですね、順平君。
 たしかに先ほどまで座長さんがここに居て、プロポーズを
 されてしまいました。
 それはそれとして、私も嬉しく受け止めました。
 30歳を過ぎたとはいえ、私もまだ女としてまんざらではないと
 つい先ほどまで、自己満足に浸っておりました。
 ほんの一瞬だけですけどね・・・・」

 「微妙な表現ですね。
 裏が色々とあるという意味ですか?」

 「その通りなの。
 ついては、お二人にどうしても手伝ってほしい事があるので、
 こうして呼び出してしまいました。
 その話を全部聞いてから、後から気が変わったというのでは私も
 座長も困るので、なにも聞かないうちに、協力をすると
 約束をしてくださる?
 無理は承知のうえでのお願いですが・・・・」
 
 レイコがすかさず手を上げます。