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暗い、暗い。
該当も殆ど無い只の一直線な道をただひたすらと駆け抜けている人物が2人。
その暗闇はカラスだって見えないくらいだし、梟だってきっと怖気づいてしまうほどだろう。
だがこの2人はそんなことは全く気にせずに今は自分達の安全を第一にと駆け抜けていた。


「ハァ・・・、ハァ・・・・!!」

この者はもう脚がまるで藁の様になっていて足が出るのがやっとの状態となっている。
それにくらべて、

「兄貴!おい!もっと早く走って!追いつかれちゃうよ!」

この者は体力がまだ有るみたいで何ともないようだ。
後者のものが前者の傍により、「よし。」といって手を取った。

「いやいや、何がよし。なんだよ?俺が体力が無い事くらい知ってるだろ?」
「シラナイヨ。」
「嘘つけぇぇぇ??!」

そんなツッコミを華麗に交わした後者。
名前は沢渡護。
華麗なるツッコミをした前者。
名前は沢渡攻。
とある理由にして(半分は強制となるだろうが。)この一直線を絶賛駆け抜け中だ。
別に青春を謳歌しているとか、ペナルティーとかではない。本当に不幸な理由だ。

「兄貴、もうOK?」
「だ、駄目っぽい・・・。」

未だに体力が戻ってこない。額に汗が滲む。
----何でだ?
いくら体力の無い俺でも流石にもうチャージが終わっているはずなんだが。何かがおかしい。
それに、こんなにも街頭がないのも一直線な道も。

「街頭・・・すくねーなぁ。」
「え?あぁ、そうだね。」
「なんか、違和感が収まらない。」
「うん、僕も思ってた。未だに兄貴の体力が戻らないのもそのせいなんじゃない?」
「・・・・あぁ。」

護も流石に感づいたってことは、きっとそうなんだろう。
何かのせいだ。俺等の知らない・・・。
護はきっとさっき繋いだ手の中から情報を収集したんだろう。それで自分の情報と結合したって言うのが妥当だ。
そこまでのモノは俺達にはできないけれども、お互いの情報交換程度ならいくらでも出来る。

後ろからの気配が近づいてくる。相手はざっと10数人。
俺達の不運が招いた事だ。何とかしたいのは山々なんだが・・・。

「体力が、戻んねぇ・・・・。」

未だに、だ。
全く、皆無だ。どうしよう。

「兄貴、今更なんだけどさ」
「あ?」
「ここ、何処?」
「・・・・わからん。街頭ないし、一直線だし、暗すぎるし。」
「だよねーー。」

諦め切った表情をなさっている。こんな顔を見たのは初めてだ。護の顔を読み取れるのもきっと俺だけだろう。
仕方ないから、徒歩でもう少し練り歩いてみる事にした。
後ろから攻めてくる輩とは結構な距離をとったはずだし、大丈夫だろう。
それにしても、ほんと、ここ何処だろう。


「兄貴、どうする?」
「後ろにはあいつらだしなぁ・・・。」
「前には何も無いしね。」
「「前に行くか(こう)」」

仕方ないから、まぁ。前へ。


風が吹き抜けて俺等の間をすり抜けていく。
さきほど気付いた事なんだが、俺が余りにも疲れてフラフラして横に倒れそうになったんだ。
そしたら、不思議な事に倒れそうになった方向の足元が無くなっていた。
つまり、ある一定の幅しか無いのだ。そのときに下方から風が吹き抜けていた。きっと今流れているのは下方からの物だろう。
そして、きっとこの道は土手とか丘ではないのだ。そんな低いものでは。
本当にここは何処なのだろう。何処に俺らは向かっているのだろう。

「なぁーんにもわかんないや。周りが見えないし・・。見えたとして上空の星と月だよ。」

真上を見上げてみると昔はそこまで見えなかったらしい沢山の星と大きく輝く月のみだった。
月明りのおかげと瞳が暗闇に慣れてきたようで少し先が見えるようになった。
さっきまでは明るい部屋から電気を消して何も見えないような状態だった。少し、救われた。

「少し声上げても良い?」
「あぁ。」

そういうと護は息を吸い込み、ある言葉を張った。

「誰かいませんかーーー??!!」

何時もならおとなしい護。お前の中の何がそんな声を出させるのだろうか。お兄ちゃん、分かんない。
何時もは頭脳派なのに。どっちかというと、それは俺の担当みたいなんだけどな。とりあえず、

「どこから突っ込めば良いかな?」
「いや、結構本気なんだけど。」
「そうか。」
「うん。」

駄目だこりゃ。今回は兄貴な攻が頑張るしかないか。



ザワッ

「「??」」

空気が一瞬にして変化した。言葉に出来ない現象だ。冷たい空気から、ねっとりとした。そんな感じだ。

「兄貴、なんだろう。」
「分からん。一応身構えたほうが良いな。少しずつだが体力も戻ってきてる。いざってときにしか使おうとは思わないけど。」
「十分だよ。」

お互いにアイコンタクトをしてさっきまでよりも歩幅を詰めて前進していった。
空気が重い、そして熱い。何なんだ。普通ならば寒いんじゃないのか?

「・・・・。」

いた。
この現象の本人だろう。
月明りでやっと見える。
この<やっと>っていう言葉については今回説明しておこうかな。
前進黒尽くめなんだ。髪の毛は少しばかり違う色が含まれているようで多少どんな髪型をしているかは確認できた。
首からしたは完璧にシルエット。体格からして男性のようだ。きっと同じくらいの年齢だろうな。
その<やっと>の中でも一番<はっきり>している部分が一つだけあった。


「瞳が、赤い・・・。」
「兄貴、あれって・・・。」
「可能性は高いだろうけど、断定は俺達には出来ないな。」

数メートル離れているからこの声は<普通>聞こえないはずだ。超聴覚ならば例外だが。
相手も此方を気付いたみたいで少しづつこっちに体を向けてきた。

「誰だ?」

とても低い、落ち着いたトーンで。はっきりと。

「聞こえた?」
「あぁ。」

隣にいる護も聞こえたようだ。聞こえないであろう声だけど、何故か聞こえた。俺は普通なはずなんだけど。おかしい。
可笑しい事ばかりだ。
相手は顔にはきっちりと影が出来上がっているはずなのに、瞳だけは綺麗な緋色が浮かび上がっている。
その部分だけ次元が違うような・・・・。

彼は、もう目の前のところまで来ていた。一瞬驚いたがなるべく表情に出さないようにした。

「何で入ってこれたんだ?」

向こうは少し驚いた顔をしていた。おれ自身もしていいのかなって少しだけ和んでしまったのはここだけの話だ。
とりあえず、返事を返さなくてはならない。ということで一歩後ろに守を寄せた。護自身はそうされるとは思わなかったみたいだ。
----だろうな。何時もは俺だからな・・・。

「どういうことだ?此処はどこなんだ?」
「質問には答えろ。ゲートがあったろ。」

ゲート?

後ろを振り向いて護を見た。こいつも思考を駆け巡らせているみたいだ。いつの間にか俺の手を取っている。
ネットワーク接続中、みたいな。

「分かったか?」
「・・・辛うじてだけど。」
「・・・・?」

相手の顔を見ると、何をしているのか理解できないみたいな表情をしていた。そりゃそうだろう。

「見つけた。兄貴、見つけたよ。」
「マジか。」
作品名:colors 作家名:HIRO