コメディ・ラブ
俺のこと好きでしょ
「なぁ、俺のこと好きなんだろう」
「好きじゃないって言ってんでしょうが。早くでてってよ。忙しいんだから」
私は晃を教室の外に追い出そうとした。
「俺を追い出していいんですか?校長先生に言〜ってやろう。言ってやろう」
「校長先生、美香先生が大事なお客さんである俺を追い出そうと」
もういい加減にして欲しい。
もう二度と会うことはないと思ってたのに、次の日あいつはまたやってきた。
しかも畑にいかなかったら教室までやってきた。
「わかったよ。いたきゃいればいいでしょ。明日返すテストの採点があるのに……」
「お前、いいのかよ。俺様は後4日しかこの村にいねえからな。今のうちに大好きな俺様のこと見ておかなくていいのかよ!」
当たってるだけに余計に腹が立つ。
けれどここで認めるわけにはいかない。
「だから、好きじゃないって言ってるでしょうが!」
「嘘!俺のこと大好きな癖に。まぁ俺はこれっぽっちもお前のことは好きじゃないけどな」
永遠にこの繰り返しだ。
私はなんでこんな男が好きなんだろう。
自分の馬鹿さっぷりに腹が立ってくる。
なんとかあいつを帰らせて、私も自分の部屋に帰ってきた。
なんとなくテレビをつける。
「20代女性に聞いた、抱かれたい俳優と言えば、一位はもちろんこの方です。晃さんです」
「もう超かっこいい」
「見るたびに胸がドキドキする」
私はテレビに向かってつぶやいた。
「わかるよ。その気持ち」
晃が東京に戻ってもう二度と会えなくなっても、テレビでは見ることができると気が付きなんだかほっとした。
テレビに映っている晃の写真に言った。
「あと三日しかないから、腹が立っても我慢するから、明日も来てよ」
俺は小学校まで来ると、美香の教室が電気をついているのに気がついた。
外から教室を覗くと、晃さんと美香が何やら楽しいそうに言いあっていた。
「だから、好きじゃないって言ってるでしょうが!」
「嘘!俺のこと大好きな癖に。まぁ俺はこれっぽっちもお前のことは好きじゃないけどな」
俺はこの瞬間、自分の中で覚悟が決まった。
俺はその足でトニーに向かい、いつもの席に座り麦酒を一気に飲み干した。
「よし、覚悟決めた」
トニーのおばちゃんが呆れながら言う。
「ようやくかい」
俺は自信たっぷりに答える。
「ようやくだ」
あんな中途半端な告白まがいのことをしておいて、もう後には引けない。
「でも、その前に義理を立てなきゃいけない人がいる。一か月も一緒に仕事したんだから、俺だけ抜け駆けなんて卑怯だ」
おばちゃんは首をかしげていたが、静かに席を立った。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko