コメディ・ラブ
いつまでも
放課後、子ども達と教室から外で行なわれているロケの様子を見ていた。
こうやって見ていると晃はやっぱり芸能人なんだなと思う。
あいつがこっちに気づき、わけのわからない声をかけてくる。
「おい、美香。俺に見とれてんのか」
とても嬉しい。
一瞬「そうだよ」と認めてやろうかと血迷った。
けれども次の瞬間、血迷わなくてよかったと思った。
優海ちゃんが、あいつの腕を掴みながら泣いている。
そうだよ。そうわかってたんだよ。
本当に私って馬鹿だ。
声なんかかけてくれなければよかったのに。
いたたまれなくなり、教室を飛び出す。
<章=目前>
校舎中を探した。
美香は、理科準備室にいた。
必死に試験管の整理をしていた。
よく見ると、目に涙を浮かべている。
俺はわざと勢いよくドアを開けて入っていった。
「おい、どうしたんだよ。何泣いてるんだよ」
「うわっ!……びっくりした……。何してんのよ。こんな所で」
「たまたま通りかかったらさ、元気なさそうだったから」
「……ありがとう。」
美香は少し笑って答える。
「俺は……心配なんだ。お前が元気なさそうにしてると」
俺はこの雰囲気と勢いにまかせて言う。
「……ありがとう。いつも心配してくれて。」
美香が背中を見せながら答える。
俺は美香の手を掴む。
「……俺のこと、もっと頼ってくれよ。俺はいつでもお前のこと考えてるんだから」
俺は一生分の勇気を使って言う。
「……てっちゃん。」
美香が何かいいかけたその時
「ドーーーン」
ごう音が鳴り響き、ドアが倒れる。
倒れたドアの上で美香のクラスの子ども達が数人、子どもながらに気まずそうに愛想笑いをしている。
「先生、こいつが押した」
「違うよ、よっちゃんが聞こえないって言ってさ」
「最初に言い出したの、和也くんだよ」
美香は無言で顔を上げた。
「何してるのよ!!!」
美香の怒った声が校舎中に鳴り響いた。
俺は自分の運の悪さを恨んだ。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko