コメディ・ラブ
あっと言う間に
コントに出てくるような見事なまでの千鳥足で気分良く旅館まで帰ってきた。
夜中の旅館は怖い、真っ暗闇の中でいきなり建物がドーンと現れる。
自分の部屋になんとか入り、布団に横になろうとした時、俺はあることに気がつく。
「カレンダー!!」
カレンダーを見ると×は6月6日で止まっている。
一日終わるごとに×つけようと思っていたのに。
気になり携帯を見る。
「えっ、もう6月21日……」
ペンを持ちカレンダーに未精算分を書こうとしたが、ペンをそっとテーブルに置いた。
布団に横になって背伸びをする。
自然とこの村に来てからの色々な出来事が思い出された。
川であいつに転ばされ、別な日に足を怪我し、畑仕事を手伝わされ、虫に襲われ……
「俺、さんざんな目にあってるな」
でも、そんなに悪い思い出ではない。
楽しかった……かな。
俺は不思議と寂しかった。
やっと東京に帰れるんだけれども。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko