コメディ・ラブ
まさかね
毎日ロケが終わったら特にやることもないし、持って来た漫画は全部読んじゃったし優海、本当につまんない。
同じ旅館に泊まってるはずなのに、どれだけ旅館の中をウォーキングしても晃さんにも会えないし。
なんとなく外に出てみたら、お月様とお星様がとても綺麗だった。ロマンチック。
「今日ケーキ食べちゃったから、ウォーキングしないと。アイドルは大変よ」
自分で自分を励まして夜のウォーキングに出てみた。
小学校まで来たら、なんと、、、、、晃さんの姿が見えた。キャーーー
「晃さん。何してるんだろう?」
誰かと喋ってる。
まさか女……
女が晃さんを追いかける。
「今度こそ許さないから」
「うそうそ。こわっ」
声だけ聞こえてくるけど、暗くて誰だかわからない。
「あっ!美香先生だ。まさか…あの二人……」
どこまでも続く海岸線。お日様が沈みかかっていてあたり一面オレンジ色に染まっている。
「ここまでおいかけてごらん」
晃さんが優しく美香先生に語り掛ける。
「まって晃さん」
美香先生が手を晃さんに伸ばす。
「美香、こっちにおいで。」
晃さんも手を伸ばす。
「ってそんなわけないか。きっと本当に鬼ごっこしてるの」
優海、冷静に考えるとそうだと思った。
「待たんかい!」
「いやだよ。おしりぺんぺん。」
晃さんと美香先生のはしゃぐ声が聞こえてくる。
「もう、本当男の人達っていつまでも子どもなんだから」
優海はしばらく二人の様子を見ていた。
<章=気づく時>
テレビがNNKとムジテレビの2個しかうつんないなんて信じられる?
ラジオも電波が届かないし、雑誌も漫画ももう飽きちゃった。
「優海はくまさんが好きなの。」
そうテレビで言った日から次から次へとくまのぬいぐるみが贈られてきて参っちゃった。
本当男の人って単純なんだから。
でも一回も優海が抱いてあげないのはかわいそうだから、日替わりで抱いてあげてるの。
今日のくまさんを持って窓からなんとなく外をみていた。
「あっ、晃さん」
な、なんと晃さんを発見!
「今日もでかけるの?どこいくんだろう」
優海は少し考えたけど、決めた。
「……ついていっちゃおう。優海はかわいいからストーカーにはなんないし」
晃さんの50mあとを優海がついていっているの。
優海は追っかけのプロになれるわね。
そんなことを考えていると、晃さんは小学校に入っていった。
「……また……美香先生に会いに来たの?まさか、、、」
小学校を覗くと、待ち合わせたように美香先生が待っていた。
優海、必死に考えてわかったの。
「そうよ。間違いないわ。」
「晃さんと優海さんは……」
「男と男の硬い友情で結ばれてるのよ」
優海って頭いい!
美香先生って、頼りがいがあってかっこいいし。そうに違いないと思う。
「きっと今頃、二人で好きな女の話しとか人生についてあつく語ってるに違いないわ。っていうか好きな人って誰よ。もう 晃さんったら」
優海、恥ずかしくなっちゃった。
後ろをふとみると課長さんが歩いてくるのが見えた。
美香のアパートの階段で座っている。
このタバコの吸殻を見たら、俺の待っていた時間がばれそうだ。
おかしい。
美香の帰りが遅い……夏休み前だから別に仕事は忙しくないって言ってたのに。
俺は不審に思いながらも、小学校までの道のりを歩く。
門の前に誰かがいる。
「あっ課長さん!」
声をかけられた人物をよく見ると、意外な人で驚いた。
「あっ優海ちゃん……ちょっと美香に用事があってさ」
俺はあわてて優海ちゃんに説明する。
「美香先生ならあそこよ。晃さんと男と男のあつい会話をしてるの」
優海ちゃんが得意げに教えてくれた。
「男と男のあつい会話?」
俺は予想外の展開に驚いた。
「そうよ。二人は熱い友情で結ばれてるのよ。昨日だって一緒にいたんだから」
優海ちゃんはさらにたたみかけてくる。
「……昨日も?」
俺は仲がよさそうに花壇に座っている二人を見た。
「あっ、まさか課長さん…いくら熱い友情がうらやましいからってあの二人の中に入ったらだめだからね。あの二人の友情は誰も邪魔できないくらいあついんだから」
優海ちゃんが有難い忠告をしてくれた。
俺は美香とは付き合いが古い。
表情、しぐさを見てあいつがどんな状態かすぐわかる。
……少なくとも美香の方は熱い友情なんて思っちゃいない。
昔、美香に頭をバケツで殴られたときのあの痛みを思い出した。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko