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コメディ・ラブ

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恋愛の神様



子ども達が帰宅し、職員室でテストの採点をしていた。

「美香ちゃん、見てみて」

佐和子が雑誌を持ってきた。

「ほら見て。今年の芸能人好感度調査が発表されたわ」

佐和子が得意げに見せてくる。

「どうでもいいよ」

と言うと佐和子は不敵な笑みを浮かべた。

「どうでもよくないと思うわ。少なくても6月の終わりにはそう思ってると思う。ここ見てここ!」

佐和子はなんだかよくわからないことを自信満々にそう言い切った。

「嫌いな俳優……3位、晃。あははっ。わかるわかる!ありゃ嫌われるわよね」

思わず腹を抱えて笑ってしまった。

「佐和子、そんなに心配してくれなくても大丈夫だって。もうわかってるからあいつのこと。」

本当にいい奴だ。佐和子が驚いた顔をした。他の先生達も何故かこっちをみている。

「美香ちゃん……まさか」

「あいつのスイートハニーもここにいるしな」

「えっ」

佐和子がこんなに驚いた顔を見たことがないっていうぐらい驚いた。

職員室にいる先生達がわらわら集まってきた。

そんなに意外なことか?

「……そ、それはあつしさんも認めてるの?自分の子だったって」

佐和子が息をのみながら聞いてくる。

「当たり前だろう。自分で植えたんだから毎日会いに来てるよ。」

「えーーーーーー!!嘘でしょ」

そばにいた全員が驚愕している。何故だ。

「なんでそんなに驚くんだよ?みんなあそこ見てよ。晃さんのスイートハニー。元気でしょ?」

私は窓から見える畑のかぼちゃを指さした。

「あっ、晃さんが植えたかぼちゃのことね。」

佐和子が勘違いしていたらしく、ようやくわかったらしい。

「そうだと思った」

「びっくりした」

「やっぱ美香先生はないよな」

口々に言いながら先生達が自分の仕事に戻っていく。

「一体なんなんだよ。」

そう呟くと佐和子は私の手をとり言った。

「もし、苗植えするときになったら準備はしっかりね」

全く意味がわからない。



ロケは一日たりとも抜けられない。

なので晃さんに代わってマネージャーの俺が社長に呼び出され東京に戻ってきた。

机の上には先日の好感度調査の乗っている雑誌が広げられている。

社長は腕組みしたままずっと黙っている。

「すいません。俺がしっかりとしてないばっかりに週刊誌にとられてしまいました。」

俺は頭を下げる。

「……女癖が悪い。女が一番嫌うことだ」

社長がポツリと言う。

「晃さん、確かに女癖は悪いですが、スタッフの信頼は厚くて、この間なんか優海ちゃんが降りるって騒いだときも説得してくれて…」

「優海ちゃんを説得した?」

社長が優海ちゃんという単語に食いついた。

「そうなんですよ。スタッフ全員キャスト交代を覚悟してたんですけど、晃さんが」

「……そうか、優海ちゃんという手があったな。」

俺はただ社長が不気味に笑いだしたのを見ているしかなかった。


<章=パンダだって嫌われる>

パソコンの「。」のキーを威勢よく人差指で打つ。

やっと終わった。

何とか今日まで提出の「学力向上の取り組みに関する報告」を教育委員会に送ることができた。

職員室にはもう誰もいない。

ふと窓を見ると、かぼちゃの畑が目に入った。

何故だかわからないけれど急いで校舎を出てきた。

花壇を見ると晃(さん)がやっぱり座ってかぼちゃをみていた。

「見た。見た。あの雑誌。3位入賞おめでとう!」
   
私が大声で言うと、晃はただ静かに暗く振り返った。

「お前か。……俺のブレイクハートに塩を塗りやがって」
   
そう言い返してはきたものの、また晃さん(仮)は力なく下を向いた。

「……まさかあのランキング本気で気にしてた?!よっ嫌われ者!」

茶化してみたが余計下を向いてしまった。

「……あのランキングでCMとか、ドラマのキャスティングとか決められるんだ。当たり前だろう」

「でもまだ好きな俳優の2位にも入ってたからいいじゃん。2位じゃ駄目なんですか?」

私の微かなボケにも気がつかず俯いている。

「……俺のことみんな嫌いなんだろう?もう俺は外を歩けない」

晃が魂が抜けたような声でしゃべる。

「えっ?」

「俺を許してくれるのはかぼちゃちゃんだけだ……」

腹が立って蹴飛ばしてやろうかと思ったけれど、かぼちゃを触ってる後ろ姿がなんか可哀そうでやめた。



「俺を許してくれるのはかぼちゃちゃんだけだ……」


とつぶやき俺はただかぼちゃちゃんを触っていた。

あいつはただ無言で立っている。

こんなときに「私だって晃さんを許してるよ」ぐらい言えよ。

本当にデリカシーのない女だ。

「……パンダって知ってる」

デリカシーのかけらもない女は優しい答えが必要な時に意味不明な質問をする。

「……馬鹿にするなよ」

俺が少しあいつを見ながら答える。

「パンダだって嫌いだって言う人がいるじゃん。あの全世界の人気者の。」

「……パンダ」

俺は全世界でどれだけパンダが人気者か考えた。

「だから全国民に好かれるなんて無理。何月何日何時何分、地球が何回回ったって無理。」

「……簡単にそういうけどさ」

反論しかけた俺の口を封じる。

「うるさい。黙れ。人がどういうかより、自分で自分のことほめてやれよ。そうしなきゃ誰が自分のことほめてくれんだよ」
 
こいつはいい女ではないけれど、いいことを言う。

「……お前、Fランクの女のわりにいいこというな」

お礼の代わりに出てきた俺の言葉は自分でもびっくりするものだった。

「人がせっかく励ましてやってんのに」
   
やべえ。あいつの拳が震えている。

俺とあいつの付き合いは短いがわかる。

相当怒ってる。逃げろ。

「今度こそ許さないから」

鬼の形相で追いかけてくる。

「うそうそ。こわっ」

俺は逃げ回ったが何故だかわからないが笑えた。

作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko