草薙教授の人間学講座
「僕なら、G1レースの結果を見に行って全財産をつぎ込んで賭けるかな
そういう事を考えた人も多いだろうけど
他の事を考えた人は居るかな?
手を挙げてくれた人の中で・・・森川くん」
「犯罪被害者に、危ないから気をつけろとか
交通事故を起こす前に、注意しに行きます」
「森川くん・・・また君の発言とは思えないような事を言い出したね
誰かに自分の人間性をアピールしたいのかな?」
「いえ、極真面目にそう考えています」
「その表情がかなり嘘臭いが、それは見逃すとして
タイムマシンというのは、自分の利益の為にも
他人の利益の為にも、どうにでも使う事が出来るものだけれど
過去を変えてしまうと、現在も変わってしまう可能性がある
確かに事故を未然に防ぐ事は、有意義かも知れないが
それによって変わってしまう事もある」
「でも、それで人の命や怪我を防げるとしたら
それは素晴らしい事ではないんですか?」
「けれどそう、そこなんだよ 川本さん
そこがこの講義の本質でもあるんだ
変える事が出来るから、変えていいのか
実際はタイムマシンなど在りえないのだから
空想上のものを基準に考えるというのは、無駄とも言えるけれど
現時点で、目の前に二つの選択肢があるとして
その片方を選べば、もう片方の選択肢は捨てる事になる
その時点で、運命の分岐点は片方に流れ
もう片方の選択肢の先を見る事は出来ないんだ」
「じゃぁ、そのもう一つの先を見に行きます」
「で、戻っていい方を選ぶのかな? 沢野くん」
「勿論」
「なるほどね それは賢いかも知れない
けれど、普通はそんな事は出来ない
タイムマシンなんて無いからね
では、どうするのか
本質的に出来るだけ間違った選択をしない努力をするしかない
けれど、正しい選択と言うのは得てしてなかなか自分にとって
心地良かったり、楽だったりするものでは無い事が多いんだよ
だから、楽な方を選ぼうとする事が多いし
後にそれが間違っていたと後悔する事が多いんだ
頷いている人が多いですねー
事実そういう事だという証明みたいなものですね
過去を変えるという事で、ちょっと紹介したい映画があります
バタフライ・エフェクト という作品があるので
興味がある人は、レンタルで探してみてい下さい
上映会?ここでかい?山根くん?
まぁ、講義の最中に上映会をしてしまえば
最低2時間は私も楽が出来るんだけど、そんな事が学長にバレると
確実に叱られるので、それはやめておきます」
「どういう映画なんですか?」
「今のは中田さんかな?
この映画は、子供の頃に書いていた日記を読み返すと
その時にタイムスリップしてしまう青年の話でね
それを利用して、過去に後悔した事や
変えたいと思った事を変えてしまうんだけど
結果的には思い通りの現在にはなっていないというのもなんだよ
つまり、過去を変えても、それからの時間の中で
大小様々な出会いや変化が加わる事で
少しずつ違ってしまったものが、何年かの経過で
大きな変化になるという事だね
時間というものは、ただ過ぎて行っている訳では無いという事だ
なんだが、生き物みたいだよね
それでは・・・・次に欲しいものの中で面白かったのは・・・
これはちょっと怖いね・・・デスノート・・・」
作品名:草薙教授の人間学講座 作家名:fool