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University to GUARD 第2章

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第二章 任務
時刻未定 西欧・某地帯
「久しぶりの実戦だ、しくるなよ」
「なに、すぐ終わるさ」
 高度は一万メートル上空。プロペラによる爆音を響かせて男四人を乗せたヘリコプターは、木々が生い茂りところどころに河をのぞかせるジャングル地帯の上空を飛んでいた。男四人はみなが轟音中でも会話できるように、オーバーヘッド型のトランシーバにマスクを着けていた。
「今回の仕事は“兎狩り”だ。気負いすぎて逃がすなよ」
「二兎を追う者なんとやらだ。もっとも、今回は一兎だが」
「誰かが居眠りでもしなきゃ問題ねえな。むしろ俺一人でもいける」
「一人でイくなら俺たちは視てやるか」
「三人に見られたとあっちゃそれだけでイッちまいそうになるぜ」
 ヘリのスピードが落ち、高度が下がっていく。
「降下準備だ。兎とはいえアーマノイド持ちだ。油断はするな」
「了解」
 リーダー以外の三人が一斉にトランシーバとマスクを外し始める。
「これより“オペレーション・ラピッドハント”を開始する。総員降下せよ」
 ヘリのハッチが開けられ、男たちが次々とジャングルへ飛びおりていく。最後に、リーダーがハッチに立った。
「フォックス1(ワン)、ダイブ」
 風を一身に感じ、耳を風切り音が包みながら重力が急激に落下速度を上げていく。
「フォックス1、<Installation>」
 空中で男たちが次々とアーマノイドを装着し、リーダーの全身にも漏れなく装着された。
「フォックス部隊、ミッション開始」
 密集した木々の中へ、アーマノイドを装着した男四人が凄まじいスピード突っ込んでいった。
「ハイヤー1からHQへ。フォックス部隊の運搬完了。帰還する」
「HQからハイヤー1、了解」
 四人を運んだヘリコプターはぐるりと旋回するとジャングル地帯を後にした。
「HQからフォックス部隊の諸君へ。オペレーション“ラピッドハント”の指揮をするハンターだ。よろしく。早速だがオペレーションに移る。フォックス4はH(Hyper)T(Transefer)P(Protocol)<超通信専用プロトコル>でこちらのモニターと同期させろ。こちらのプロトコル承認コードおよび通信ポートはそれぞれ、
“FOX”と1200番だ」
「フォックス4、了解。HTPにてハンターおよびフォックス1,2,3へのコネクション開始」
 フィックス4のアーマノイド背部から二つの円柱が突出し、傘が開くように六本のアンテナが開いた。フォックス1,2,3のディスプレイ右上に、フォックス4から送られる情報が追加された。現在位置、周囲のオブジェクト環境、熱源、各種レーダー反応、衛星通信による全員の俯瞰図といったものが次々に表示されていく。
「ハンターからフォックス1へ。現在、そのエリアにはデルタ部隊からの情報によると、敵性アーマノイドが一体北西へ向かっているらしい。およその割りだされる位置は送ったエリアの通りだ」
 フォックス4を経由して、俯瞰図がズームダウンされ左上の一体にマスキングが施された。
「ただし、あくまで割り出しだ。注意して向かってくれ」
「はいよ。全員わかったな、我々は北西へ向かうぞ。フォックス4を私(1)と3で前後に挟み、2が先行する形で向かう。移動開始だ」
 フォックス2が木々を足場にして器用に跳躍して、先へ進んで行きその後を1,3,4が地面を足場にスキップををする要領で移動していく。
「おかしいくらいに何もないな」
 フォックス4が移動しながら話した。
「どうした」
 フォックス1が答えた。アーマノイドのディスプレイの一番下に<Sound FOX1>と、フォックス1が喋る度に表示される。
「戦闘痕らしきものさえないんだよ。焼けた痕や切断痕を持つ木々も、周囲をスキャンする限り見当たらない。地面にもそれがない」
「ここで戦闘が行われていないだけ、かもしれないな。が、油断は禁物か」
 部隊全員が周囲を見渡しつつ、フォックス4からのデータを見ている時だった。
「ハンターからフォックス部隊へ緊急入電。デルタ部隊の信号が途絶えた。繰り返す、デルタ部隊の信号が途絶えた。場所はそこから真北のここだ」
 俯瞰図の画面に再度別の色でマスキングが施された。全員が足を止める。
「先行部隊の信号が消えた……?」
 フォックス1の呟きにハンターが答えた。
「諸君らと別のアーマノイドを追っていた先行部隊だ。四人編成だったのだが」
 四人編成でたった一体を追っていたのにも関わらず、突然の信号消滅。導かれる答えは一つだった。
「アンブッシュ<待ち伏せ>か」
 フォックス1の合図で部隊全員が足をとめた。先行していたフォックス2が周囲を警戒しつつ部隊に合流していく。
「デルタ部隊も確か四人編成だよな。たっだ四人とはいえ、すべての信号を途絶えさせるってのはどうなんだ」
 フォックス2が尋ねた。
「あぁ、このジャングル地帯だ。おまけに、ここは通信が生きてることから最低でも自身がいる座標と周囲の情報は取得できる。それを駆使すれば、脱出なり救援申請したりできるはずだ」
 フォックス3が答えた。そこにフォックス1が腕を組んで話を加える。
「と、すれば。もしそれが出来ない状況下に置かれるとすれば。何を仕掛けられどう殲滅されるのか」
「通信妨害と的確な包囲網でしょうね」
フォックス4が様々なホログラム化したコンソールを叩きながら応え、続けた。
「しかし、それを成し遂げるには用意周到な準備、確実な先行情報源の確保、近辺の地形把握が必要不可欠になります」
 先行情報源の確保。部隊全員が復唱した。まさか―――。
「フォックス1からハンターへ。我々の任務内容が漏洩している可能性はないのか」
「ん?どういうことだ」
「デルタ部隊の殲滅プロセスから察するに彼らは敵性勢力に―――」
 会話を遮ったのはフォックス4の被弾だった。
「話はあとだ!フォックス2は周囲の索敵、3,4は伏せろ!」
 たった一発の被弾。しかし、銃声は無かった。それどころか、フォックス4の耐久値が減ることを視認するまで、部隊の全員が何が起こったのか理解できなかった。
「二発目が来ない。場馴れか」
 フォックス2は両肩に展開させたデバイスを稼働させながら、しきりに周囲を見渡した。
「二発目が来りゃあ、潜んでる馬鹿を特定してやるってのにな」
 部隊の通信にノイズが走った。
「―――ザッ―――{ほう。二発目がほしいか}」
 四人の耳元に聞き慣れない声が響いた。
「駄目だ!こちらの暗号化が覆されてる!」
 フォックス4が叫んだ刹那、全員のディスプレイから仲間の情報及び現在位置などの通信情報がまたたくまに接続切れとなっていった。ことごとく<Not connect>と表示されては消えていく。
「{兎狩りのつもりだったのだろうが残念だった。ここは俺たちの庭だ}」
 完全にジャックされた通信に“敵”の声が乗る。
「今の弾……これが狙いか」
 フォックス4が懸命に通信を復旧させようとするも、すでに築いたネットワークの管理権限を奪われた上に、再構築しようにも再度新しく暗号化したネットワークを周囲に広げようとしたところで、すぐそばにいる仲間にすら届かなかった。
作品名:University to GUARD 第2章 作家名:細心 優一