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銀の月

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「銀の月」

 私は白のドレス
 貴男は黒のタキシード

 静寂のバルコニーで貴男はギヤマンのグラスを傾ける
 厭味でない仕草が憎らしい

 そして貴男は血のような、赤に近い黒を呑み干す
 貴男の喉を通る時、それはどんな悲鳴を上げているの?

 貴男は空を見上げる
「雲間から月が覗いている」

 夜の色は青
 雲の色は黒
 月の色は銀

 それらが微妙に混ざり合いながら、闇のオブジェを創り出す

 貴男の澄んだ瞳が私を捕らえる
 貴男のしなやかな指が私の肩に触れる

 これだけで女を酔わせる技量を持った男なんて、そういたものではないわ

「貴男の・・・・・・好きにして・・・・・・」

 私の胸を飾るロザリオのクルス
 それをものともしない貴男

 酷い男
 したたかな悪魔

 貴男は「いいのかい?」なんて尋ねない
 優しい仮面のその奥の、自信と欺瞞がそれを許しはしないのはわかっていること

「そうさせてもらうよ」
 勝ち誇ったように呟く貴男の指が離れる

 グラスを置いた貴男が煙草に火を点ける
 無駄のない仕草

 私は紫の煙の行方を追う

 貴男は私の頭から爪先までを眺める
 温かくも冷たくもない瞳
 別に品定めするでもなく、クールな視線

「貴女とひとつになりたい」

 その言葉の裏側で、貴男は待っている
 私が身の内に巣くうものを吐き出すのを
 ただただ、煙をくゆらせて待っている

 ひとつになりたいと願う貴男と私
 それは貴男と一体になり、同化するということ

 銀の月が貴男と私を照らす

 私は纏っていたドレスをはらりと落とす

「どうぞ……、私を食べてください……」

 貴男は重い真鍮に煙草を押し付け、眉ひとつ動かさずに私の腰を抱き寄せる

 そして熱い接吻

 唇と唇が離れた後に、貴男は私を取り込みはじめる

「嗚呼・・・・・・」
 私の唇から漏れるため息

 銀の滴を垂らす月は、私を照らす無影灯 

作品名:銀の月 作家名:栗原 峰幸