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「舞台裏の仲間たち」 57~58

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 くるりと振り返った貞園が、恥ずかしさを精いっぱいに見せながら
胸の膨らみに自分の両手を置きます。
ほのかな月明かりの下でも、真っかになっている貞園の横顔が見えます。
「どれ」と、遠慮をしないで庭園の形よく隆起した胸に、左の耳を寄せました。
貞園の両手が、囲い込むように私の頭を引き寄せます。

 「本当だ。
 最大限に祝福をしながら、早鐘のように鳴り続けている。
 じゃあ、ご褒美をあげよう 」

 前髪をすこしかき分けて、
現れた白い額にかるくキスをしてから、両肩に手を置いて、
貞園の見開いている瞳を覗きこみます。

 「君はもう、今でも充分にチャーミングだ。
 でも、今の君の若さの中には、
 たくさんの可能性と一緒に、良い大人の女性になるための条件が、
 まだ此処に君のふっくらとした胸の中に
 眠っているままなんだ。
 これからたくさんの人を好きになって、泣いたり笑ったりを
 繰り返しながら、いつの日か、素敵な女性に成長を遂げて行く力が
 貞園の形のいい胸の中で、まだ息をひそめて眠っている。
 焦らなくてもいいというのは、そう言う意味さ。
 あと、数年したら君ともう一度あいたいね、
 おそらく、私を含めて、おおくの男性が、きっと
 君の虜になるだろう。
 君には、そういう可能性が充分にある、
 私たちは会うのが、ちょっぴり早すぎたかもしれないね」

 それが想いつく、精いっぱいのいい訳でした。
そんな風に自分にも言いきかさなければ、一線をこえてしまいそうな
危険な気配があります。
淡水の海を静かに照らす明るい月といい、ほのかに寒い海からの潮風といい、
健気に瞳を濡らしているこの18歳を前にした時の、それは精いっぱいの
私の抵抗そのものでした。

(59)へ、つづく