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「舞台裏の仲間たち」 57~58

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 「タクシーで戻ってきたために、君のスクーターは夜市に置きっぱなしだ。
 朝食を食べたら、二人で取りに戻ろう。
 それと、私にとってはトラブルだが、君にとってはいい知らせが有る。
 昨夜、亀田社長が来て、滞在をあと2日ほど延期することになった。
 仕事上のトラブルを解決するための日延べだ。
 了解かな? 」

 貞園が嬉々としてベッドから飛び降りてきます。

 「神は見捨てていないわね。
 あと2日もチャンスをくれるなんて、幸運が舞い降りてきたわ。
 よし、シャワーを浴びてこよう」

 言うが早いか、もうTシャツを脱ぎ棄てて浴室へと消えて行きます。
お湯のはじける音と共に、貞園の鼻歌が聞こえてきました。
立ち直りの早さと言うか喜怒哀楽の切り替えの速さに、どこか大陸的な
特性を感じさせる女の子です。

 貞園の話では、夜市でも朝食がテイクアウト出来ると言うので、
タクシーを呼んででかけることにしました。
夜が明けたばかりの台北の町は、今朝も爽やかそのものでした。
昨日から最低湿度が30%台をキープしていて、乾燥した
温かい空気が流れています。
南北に長い台湾は、南は熱帯に属していますが
北に有る台北の気候は、沖縄などと同じ亜熱帯です。


 午前中に予定されていた仕事とは、
トラブル続きの金型工場のあらためての視察と
2週間後に輸送が予定されている金型の完成度の最終チェックでした。
予想以上に完成度の低い仕事ぶりに、今後の苦戦の様子が懸念されています。

 「国民性の違いだろうな、
 こいつらには、勤勉さが足りない。
 残業をしようという気もなければ、出来上がるまで
 粘ろうと言う気迫も無い。
 時間がくればすぐに帰るし、問題が有っても
 又明日やろうと、まったく素っ気ない。
 技術云々と言う前に大陸的な国民性には、閉口するね」

 汗をふきながら工場内を案内する亀田社長が、
現地スタッフが離れた瞬間を見計らって、こっそりと私に耳打ちをします。

 「君には申し訳ないが、今後の国内でのメンテナンスのすべてが
 この金型と今回のプロジェクトの命運を握っている。
 雄二にも電話でよく説明をおくが、
 そのあたりの立ち回りにも、いろいろと配慮をして
 いただけるとありがたい。
 ものになるかならないかの紙一重で、
 俺たちの運命が天と地ほどの結果になる。
 頼んだぜ、順平さん」