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窓の涙

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―窓はまだ泣いている― 私は妻に教えてもらった家事をやり始めた。それは思っていた以上楽にこなせた。体を動かしているうちにだんだん気分も良くなっていく気がした。

気がつくと、娘が荷物をとりにくる時間だった。そう思う間もなく、娘が入ってきて、「お父さん、もう起きてたの」と言う。私は「もう老人時間で早く目がさめるよ」と言った。
「やーね」と言いながら、娘は二階の自分の部屋に駆け上がって行く。何度か階段を上り下りしたあと、娘と彼が顔を出した。
「お父さん、じゃあ」と言ったあと、娘は何か言おうとしたが、外でクラクションの音が鳴って、二人は慌てて出て行った。私の家には車も駐車場も無い。その家の前の道は狭くて、長く車を停めておけないのだった。

私は車の走り去る音を聞き終えてから、しばらくボーッとお茶を飲んでいた。電話が鳴って出ると、妻からだった。「だいぶ良くなったからあと少しで退院できそうだよ」声が嬉しそうだった。妻からの電話をきると、着信があり携帯にメールが入っていた。

―お父さん、バタバタして出てきてごめん。何か言おうと思ったけど、涙が出そうだから、メールにするね。やはりこうかな。

「お父さん長い間ありがとう。お母さんをたのむね」―

私は涙を飲み込んで窓に近寄り外を見る。窓は泣き終えて、青い空が見えた。




(了)

作品名:窓の涙 作家名:伊達梁川