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「舞台裏の仲間たち」 53~54

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 帰り道でも貞園は、スクーターの後部座席に座りました。
同じように私の背中に張り付いて、右の肩の上に顎を乗せる姿勢はそのままでしたが
いつまでたってもただただ無言のままです。
金 美齢との別れ際に名刺をもらい、いくつかの会話を交わしていましたが、
それを最後に、ひとことも言葉を口にしていません。

 台北の市街地が近くに見えてきたのは
夕暮れが迫り、畑道にも街灯が付き始めた時刻です。
この先の道路を確認しようとして後ろを振り返ろうとした時に
突然貞園が泣きじゃくりはじめました。
驚いてスピードを緩め、道端にスクーターを停めた時には、
もう背中に持たれたまま貞園が大きな声で鳴き始めてしまいます。
 
 18歳が聞くのには、残酷すぎる証言です。
平静をよそっていた貞園が、ここまで耐えてはいたものの、
経過する時間と共に、ついに堪え切れなくなってしまったようです。
小高い丘からまっすぐに下っていく一本道の先には、
都会のネオンと生活の光がまばゆいほどに満ち溢れているのが見えました。

 道路から離れて、ヘルメットを脱ぎながら
草むらに腰を下ろした貞園は、背中を丸めそのまま腕をかかえこみ、
小さな一つの塊になってしまいました。
傍へ寄る訳にもいかず、ポケットから煙草をとりだすと一本目に火を付け
貞園が落ち着くのを待つことにしました。

 どれくらいの時間が立ったでしょう・・・・

 暗がりの中から、貞園がやっと立ちあがりました。
長い髪を整えながら、うつむいたままの貞園がスクーターへ戻ってきます。
何も言わずに後部座席に座ると、私の背中へ身体を預け、
ゆっくりと両手を脇の下から回してきました。
まだ、貞園の身体は小刻みに震えたままです・・・・

(55)へ、つづく