『喧嘩百景』第9話緒方竜VS松本王子
美希がエアマットをぽんと叩くとしゅるしゅると空気が抜ける。
「克紀(かつき)の手駒だって聞いてたからどんな奴かと思ってたけど」
羅牙が竜の身体を引き起こす。
「竜ちゃんなら助けてくれると思ってた?」
美希が笑う。
――緒方竜が?松本を助けると思ってたか、だと?何で――。
「お前さんが呼んだだろ?――緒方は助けるんだよ、絶対にね。お前さんは、それを計算に入れててよかったんだ。克紀ならやってるな」
不知火羅牙はそう言った。
――俺が――――。
光は耳の後ろに熱を感じた。
「天ちゃん、俺ヤだぞ。そんなことしなくても俺様勝つんだから」
口をとがらせて拳を構える王子に、
「バカだな王子様は。自分の相棒も信頼させられない奴がうちに勝てるかよ。相棒にあんな声出させてるようじゃまだまだだ」
羅牙は意地悪に笑いながらそう言った。
作品名:『喧嘩百景』第9話緒方竜VS松本王子 作家名:井沢さと