シンクロニシティ
赤色に充満した床の下に続く階段。微かに見える明かりに深さを感じない空間。その赤い色は一定間隔のリズム。心電図を感じさせる機械音。その程度の周波数は、普段、人には感じられない。
この空間は普段は聴こえない音を人にまで感じられるほど可聴域(音の聴こえる範囲)が広がり、視覚していた。何か電子的な力がここで大きく働いたかのように。
そこまで不思議なことだとは、その場にいるものにはわからない。
刈谷にとっては、すでに謎に包まれた数十分。一度死を体験したためか、実感のわかない今の自分。これが夢なら、危険なことで目覚めるなら、躊躇の必要もなかった。
刈谷は薄暗い階段を踏みしめて降りる。
ランプの場所を認識できたすぐわきに、人の姿を確認できた。そして近づき、刈谷は言葉を発する。
「俺は『刈谷恭介かりや きょうすけ』。LIFE YOUR SAFEの者だ。あんた……うちのお客様、だよな……『加藤達哉かとう たつや』」
なげやりな言葉で名指しする刈谷。
爆発を起こす気配を感じさせない様子。
この地下室は、体の不自由がない限り不便を感じない生活空間。エアコン、冷蔵庫、ベッド、換気ダクト。
体に電極シールを付けながら、揺り動くロッキングチェアに座る老人は、顔をゆっくり動かし、刈谷を見る。