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「舞台裏の仲間たち」51~52

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 新北投温泉は、1894年ドイツ人によって発見され、
1896年に、阪商人の平田源吾がこの地に台湾最初の温泉旅館「天狗庵」
を開いたことがそのはじまりです。
日露戦争の時には負傷兵がここで温泉治療をし、陸軍療養所が建てられた後、
日本統治時代に一大温泉街として栄えました。

 第二次世界大戦以後(日本が台湾から撤退した後)、
政府公認の置屋=公娼制度のある歓楽街となりますが、1960年後半、
ベトナム戦争で駐留するアメリカ兵や日本からの売春ツアー客が急増したために、
1979年、蒋経国により表向きは公娼制度が廃止されています。



 戦前はモダンな建物が立ち並ぶハイカラな温泉街としても知られ、
1923年には昭和天皇(当時は皇太子)も2度にわたって訪問をしています。
戦後、台湾は中華民国に帰属しましたが、中華民国政府は
北投温泉を歓楽街として位置づけ、置屋の営業を認めました。
これが今日の公娼制度の原点ともいわれています。

 ここには日本の統治時代に建てられた
建物の多くが、今も現役として健在に残されています。
高級旅館とされた日本式旅館「吟松閣」や、旧日本軍の将校クラブだった
「北投文物館」などはその代表格といえるでしょう。

 また畳敷きの部屋なども、温泉旅館などを中心に数多く残されています。
特別室の和室などは別として、たいていは団体用とされているために、
空いている時は畳の部屋と指定すれば、洋室よりも安く泊まれると言う話です。

 「ねぇその高級な、吟松閣温泉旅館が見たいわね。
 公娼制度のお勉強は、後回しにして、とりあえずお風呂に入りたい。
 せっかくここまで来たんだもの」

 ヘルメットを脱いで長い髪を自由にさせた貞園はもうすっかりその気分でいるようです。
100年ほど前に建設されたもので、日本統治時代に接待所として使用されていた建物を利用し、
1963年に再オープンしたのが、吟松閣温泉旅館です。
玄関に到達するまでの、純和風の門とアプローチや錦鯉が優雅に泳ぐ池が
印象的な日本庭園など100年前の姿そのままの、風格にあふれた外観は、
まるで京都にある老舗料亭のようです。