The repainted world
Episode.1 天使と悪魔
走り回って、何十分経っただろう。
天使、ライラは悪魔との追いかけっこで疲れきっていた。
「も、もう嫌。疲れたぁ・・・。」
この日、ライラは悪魔の領地に来ていた。領地と言っても、ただそこ一帯に悪魔が住んでいるだけで定められてはいないが。
「お?なんだもうバテたのか?」
木の上から飛び降りて来たのは、此処に呼び出した張本人、ソロモン72柱の一人、カイム。
「やっぱり見てたのねカイム、どうせそんな事だろうとは思ってたわ!」
彼女は自分の武器である弓を振り回した。
「いーじゃねーかいーじゃねーか!夜中しか出回らないお前に、運動でもさせてやろうかなーという俺の優しさだろ?」
カイムは笑いながら、自分の目の前に来た弓を掴む。
「なーにが優しさよ!アンタの優しさなんか、嬉しくもなんともないわっ!」
「昔の事でも思い出すからか?」
そうカイムが言うと、ライラは顔を赤くした。
彼がまだ堕ちてなかった頃、すなわち天使だった頃。ライラとカイムはカップルだった。
もちろん、堕天と同時に破局。
「昔の事なんて忘れたわよっ!」
そう言った瞬間、ライラの腕が引っ張られた。
さっきまでずっと追いかけっこをしていた、悪魔の集団だ。
「見つけたぞ天使!さあ、ついてきてもらおうか。」
「ちょ、離しなさいよ汚らわしい!」
足をじたばたさせても、暴れても、びくともしない。
「貴様、まだ悪魔を侮辱するか・・・。もういい!処刑は中断!鬼の下にでも送ってやれ!」
「丁度いいな!酒もなくなった頃だし。」
「あー、はいはい。ちょい待ち、ちょい待ち」
カイムがライラの手を取る。すると、反対のライラの手を掴んでいた悪魔の腕が、すとん、と地面に落ちた。
「あ、あああ、アンタ何やってるの!?こ、こいつ等アンタの仲間じゃないの!?」
地面に降りたライラがカイムに詰め寄る。
「だって俺に挨拶すらしなかったし。」
「あ、挨拶?」
後ろを向くと、悪魔達が全員、敬礼をしている。もちろん、腕を切り落とされた悪魔も。
「だからって、腕を切り落とす必要ないじゃない。アンタ本当に最低な悪魔になったのね。」
「大丈夫、アイツ等は自分で腕くっつけられるから。お前のが鬼に持ってかれる方が問題だ。」
それは、仲間として?それとも、元彼氏として?そう聞きたかったが、照れくさくて聞けなかった。
「お前等、今日後天人と鬼とまあそんな感じで友人来るから、そういうことで宜しく。」
そう言って、ライラの腕を引っ張る。
「ちょっと飛べよ。」
「なんで!?」
「秘密基地っていうの作ったんだ、俺等だけの場所。人間の知恵ってすげえよなぁ。ありえない場所に隠れた基地作るなんて。」
今、地球に居る種族は、人間の残した知恵を使って生きている。
言葉、食、文化。残った土地にそのまま人間のように生きている。
カイム達の住む場所は、「日本」。
つまり、和の文化が多い。もちろん、喋ってる言葉は日本語だ。
田や野菜を見ながら、ライラとカイムは基地へと向かった。
作品名:The repainted world 作家名:玉響甘楽